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2017-05-31 00:00
(連載1)中国本土の覇権志向と軍事力について
真田 幸光
大学教員
私には、「中華人民共和国は現行の世界秩序の変化を主導的に起こそうとしている」としか、どうしても見えません。例えば、国際社会に対しては、「一帯一路構想=シルクロード構想」を示しつつ、中国本土の影響力を強めようとしています。既に12兆米ドルを超えた国内総生産規模などを背景として、中国本土は「経済力にものを言わせた世界統治」に強い関心を示していると私は見ています。
また、そうした意味で、私は、「中国本土の覇権(Hegemony)に対する強い野心」を感ぜざるを得ません。しかし、真に覇権を意識するのであれば、「軍事力」の背景の無い覇権は意味が無いことを中国本土は十分に認識しているはずであり、実際に、中国本土は、軍事的覇権の拡大に関してもかなり踏み込んだ戦略を取ってきているものと私は見ています。そして、現実的には海洋権益の拡大を意識した制海権の拡大を意識しているものと見られますが、グローバルな視点からの覇権を意識して、宇宙開発を中心とする制宙権の拡大を意識、中国本土一国・単独での宇宙開発に注力している、と見られます。
さて、それでは、その中国本土の軍事面を司っている組織は何になりましょうか? それは、「人民解放軍」であります。中国本土は、かつて国共合作で大日本帝国の侵略に打ち勝った後、国共内戦が発生、その結果、毛沢東率いる中国共産党が勝利し、1949年に中華人民共和国が建国されましたが、その建国の立役者たる「人民解放軍」のそもそもの存立理念は、「資本家や地主から搾取される人民を解放し、貧富の格差を打破しようと言うスローガン」の中に込められていました。そして、社会主義国家・中華人民共和国建国の後は、当時、中国本土が目指してきたマルクス・レーニン主義に於ける「国家の軍隊は、人民を抑圧、搾取し、侵略、植民地支配の為の手段である。一方、人民解放軍は、人民のために革命を遂行・防衛する為の存在であり、国軍ではあり得ないのである」との考え方の下、今も、あくまでも「人民」を意識した存在であります。
よって、国務院と人民解放軍には上下関係も隷属関係もありません。そして、人民解放軍の指揮権は、事実上「中国共産党の中央軍事委員会」が持つということになります。尚、その中央軍事委員会の基本姿勢は、孫子の兵法に見られる、「戦わずして勝つ」ということにあり、その為には、(1)国際世論を含む世論戦に勝つこと、こうしたことを前提に、「嘘も100回言えば本当になる」との国際世論戦略を展開し、仮想敵国の国際的なイメージの低下を図る、(2)脅したり、すかしたりする心理戦を展開し、仮想敵国にダメージを与える、(3)国際法を生かした法律戦を展開し、中国本土に対する支持を集める一方、国際的な範疇意識の抑制を図る、といった具体的な戦略を取った上で、その後、必要に応じて、いよいよ本当の武力行為に出るという戦略を持っているように思われます。(つづく)
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