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2017-05-22 00:00
実験国家「ブータン」としての可能性と展望
鈴木 崇弘
城西国際大学大学院客員教授
ブータンは多くの制約や問題がある国だ。国土は日本の九州ほどの広さに過ぎない。人口は70万人程度で、日本でいえば政令指定都市の規模程度に過ぎない。主要産業は農業だが、国土のほとんどが山岳地区にあり、耕作地は国土全体からすると非常に限られている。空間的にかつ地形的・地理的に分断され、人々の緊密な繋がりをつくるのに大きな制約がある。ブータンは、このような状態の中、教育に力を入れており、全国民が無料で教育が受かられるようになっている。国民の識字率は高く、高学歴化してきている。他方、若者、特に都市部の高学歴の若者は失業率が高く、それゆえ、若者のアルコール中毒やドラッグ問題なども深刻だと聞く。要は、人材が社会的に十分に活かせていないのだ。
このようにブータンが抱える制約や問題を考えるとキリがない。どうやってこの国をサスティナブルに発展させていけるのかと頭を抱えてしまいそうだ。だが本当にそうだろうか?たとえば、山や谷で隔絶され、国全体や国民同士の活力を生み出しにくい環境については、現在のテクノロジー、特にIT、スマートホン(スマホ)やスカイプ・TV会議システム、遠隔地のロボット型のコミュニケーションツールやVRなどを活用すれば、どこにいてもリンクされ、都市部に出なくとも、たとえ隔絶場所にいても仕事ができる。高学歴の若者も、農村に居ながら、専門性高いプロの仕事や活動ができる可能性が生まれる、あるいはその可能性を探ることができるのだ。
さらに、最近日本などでも注目されている無人飛行機「ドローン」を活用して、各町村を結ぶ流通網や交通網を確立する実験ができないだろうか。ドローンは近い将来ヒトも運ぶことが可能になると予想されており、ブータンではドローンが人の移動でも大活躍しそうだ。他方、農地や農業における制約が多い中、より効率よく農業を行い、より高い生産性を確保するためにも、ITやIoTをどのよう活用し、どのような可能性を見いだせるかを試行、実験することも大きな意味がありそうだ。そのような実験を通じて、農業等の産業に革命的な変革を生み出せるかもしれない。
このように考えると、ブータンは、多くの制約や困難があることが、逆にテクノロジーの潜在的な可能性を探る実験場としての絶好の機会をもたらせるとも考えられる。ブータンをこのような実験国家にすることで、現時点では必ずしも十分に活かされていない、優秀でやる気のある同国の若者に仕事や希望を与えることにもなるだろう。ブータンの若い世代は、英語にも堪能であり、その点でも、ブータンが国内外の人材を活かす場所になる可能性は高い。ブータンが実際にこのような「実験国家」「イノベーティブ国家」「未来ビジョン国家」になるには、資金などさまざまなハードルもあろうが、制約があるからこそ、ブータンにはその分、可能性とチャンスがあると思えてならない。
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