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2007-03-16 00:00
異常な国から普通の国へ
大河原 良雄
グローバル・フォーラム代表世話人、世界平和研究所理事長
3月初めに千葉のある大学で、ASEANから留学の若い研究者が1年間の同大学研修の成果を発表する報告会に立ち会う機会に恵まれた。報告のテーマは「異常な国から普通の国へ:日本の希求」であった。
同研究者(Aと呼ぶ)は、普通の国たらんとの日本の希求の要因として、外的には中国の台頭、北朝鮮の脅威、台湾海峡の不安定、日本の国際貢献への欲求等を挙げると共に、内的要因として冷戦の終焉、湾岸戦争時の資金拠出のみの国際協力に対する批判に基づく屈辱感、及び米国からの圧力等を挙げている。更に小沢一郎氏の唱えた「普通の国」論について、「日本が単に経済大国たるに止まらず、国際社会において責任ある役割を果す時代の要請に応えるものであり、軍事大国化を目指すものでない」旨の所論を紹介している。その上で「普通の国」化の流れの中で日米安保同盟関係の強化、防衛ガイドラインの作成、憲法改正への志向、国連の平和維持活動への参加、国連安保理常任理事国入りの推進、印度洋及びイラクへの自衛隊派遣、加えて防衛省への昇格等の措置を逐次講じて来た旨を指摘している。防衛省への昇格についてはマイケル・グリーン (米CSIS) の「再生日本の進むべき途上に横たわっていた戦後の平和主義志向に基づくタブーの除去を意味する」との見解に触れつつ、「日本として機能的に軍事力を強めるのに資するのであろう」(シンガポールのStraits Times紙)が、「日本がアジアで従来以上の役割を果たすことに何等問題はない」との最近来日のマレーシアのナジブ副首相の意見に言及している。
結論としてA君は次の様に述べている。
日本は過去20年位の間に防衛政策を再定義する一連の有効な措置をとって来た結果「普通の国」として国際社会に再登場することになった。米国主導のアフガニスタン及びイラク戦争に自衛隊を派遣することにより、国土防衛の域を超えた海外での活動が国家防衛の一部として容認されるにいたっている。憲法上の制約は憲法第9条の改正によるか、国内法制の改正によって除去されるかであるが、流れはその方向に向かっているといえる。安倍総理は「美しい国」というスローガンによって「普通の国」への希求を加速せしめているが、その主導する憲法改正及び教育改革について未だ国民的な合意は形成されていない。いずれにせよ今夏の選挙の結果如何に拘わらず、日本は「普通の国」への道を歩み続けるであろう。
アセアンの留学研究者であるA君が「普通の国」を希求する日本の政策方向について以上の様な分析を行っているとは、アジアの隣人がわが国の政策方向について如何なる観方をしているかを知る上で興味深い事である。最近日本の国内では「普通の国」が論議の対象になる事は余りみられない様に思われるが、A君が「保守主義者」であるとみなす安倍総理の主唱する「美しい国」というスローガンを「普通の国」論の延長線上のものと位置づけていることは注目されるところである。
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