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2017-05-11 00:00
(連載2)中国の対北制裁デッドラインこそ警戒すべきでは
倉西 雅子
政治学者
第3に、中国からの“警告”は、北朝鮮にとっては“渡りに船”であり、核実験を停止している間は、準備期間となり得ます。ロシアやその他友好諸国との関係を強化し、国際的制裁網からの抜け道を確保すると共に、生物化学兵器、大型潜水艦、長距離弾道ミサイル技術など、核以外の分野における軍事力増強に専念する時間的猶予が生まれます。中国のデッドラインは、北朝鮮の軍事的脅威を逆に高める結果も予測されるのです(29日に北朝鮮は、中距離ミサイルの発射に失敗しましたが、核実験再開でなければ制裁を免れると判断したのでは…)。
第4に、中国のデッドラインは、アメリカの先制空爆を牽制する意図も隠されているかもしれません。国際社会に対して、中国が対北制裁に積極的な姿勢で臨み、かつ、北朝鮮が核実験を実施していないにも拘わらず、単独で対北空爆に踏み切ったとして、アメリカを非難するための布石を置いているとも考えられるのです。もっとも、中国の批判に同調するよりも、北朝鮮が独裁体制の下で核を保有しているという現実を直視すれば、アメリカの空爆を支持する諸国の方が数において優るものと予測されます。
第5として、北朝鮮は、核実験を経ずして、他国を核ミサイルで攻撃する可能性も否定はできません。つまり、制裁を受ける前に、北朝鮮は、甚大な被害を他国へ与えるかもしれないのです。実際に北朝鮮は、中距離ミサイルによる核攻撃を示唆することで、日本国を含む周辺諸国を威嚇しています。“遅きに失する”ということにもなりかねないのです。
以上から、米軍による空爆を含めた北朝鮮問題のデッドラインを核実験の再開に定めたい中国の思惑が浮き上がってきます。果たして、国際社会は、中国が暗に設定したデッドラインに追随するのでしょうか。中国の思惑通りにデッドラインが定まれば、朝鮮半島情勢は膠着状態に陥り、米軍は、朝鮮半島に釘付けとなりましょう。時間の経過が北朝鮮優位に情勢を傾かせるとしますと、アメリカのトランプ政権が、中国の対応に満足するとは思えないのです。(おわり)
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