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2017-05-10 00:00
(連載1)中国の対北制裁デッドラインこそ警戒すべきでは
倉西 雅子
政治学者
北朝鮮が狂気に駆られた暴力主義国家であるとしますと、その後ろ盾である中国は、したたかな無法国家と表現すべきなのかもしれません。緊迫する朝鮮半島情勢を前に、その中国は、制裁に関するデッドラインを北朝鮮に伝達したそうです。
中国が示したデッドラインとは、“北朝鮮が、再度、核実験を実施したならば独自制裁を科す”というものです。この意味するところを読み解きますと、中国は、自国、並びに、北朝鮮のために姑息な逃げ道を造っているとしか考えられないのです。
第1に、中国は、対北制裁の条件として核実験の実施を一方的に設けております。北朝鮮に対して独自制裁を宣言しているのですから、この条件付けは、中国が北朝鮮に対して厳しい態度で臨むと共に、アメリカの要請にも応えているように聞こえます。しかしながら、中国側のデッドラインは核実験の再開ですので、北朝鮮が何もしない限り、中国も何もしないことを意味します。つまり、このデッドラインは、中国による対北支援に逃げ道を与え、アメリカから要求されている制裁強化を体よく回避しているのです。中国が、注目されている石油輸出の完全停止に踏み切るとも思えません。
第2に、年当初の核実験は水爆実験とされていますが、今後に計画されている核実験とは、核兵器の破壊力の増大を目的としたものと推測されます。現状として北朝鮮が、水爆より威力は劣るものの、各方面から指摘されているように数十発程度の通常の核兵器を既に保有しているならば、結局、北朝鮮の核保有は既成事実化されます。中国のデッドラインは、北朝鮮による核保有の容認を意味しかねないのです。(つづく)
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