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2017-05-09 00:00
(連載2)現行の世界秩序の変化の中での米国の動きについて
真田 幸光
大学教員
これに対して、シリアに対しては、何故、米国の単独軍事行為が実行されたかと言えば、それは、ISなどのテロ活動の拡大にある欧州の同盟国を意識したこと。更に、シリア周辺に、米国のこうした軍事行動に直接対峙するであろう国家が地理的に存在しなかったこと。そして、中東問題の根幹にあるイスラエルとの関係からすれば、国防省筋が米国単独軍事行為に出たことを、国際金融筋も一旦容認したものと思います。
しかし、北朝鮮に対しては、北朝鮮自身の表面的に見える侵略行為やテロ行為は顕在化しておらず、こうした中にあっての軍事行動には国際社会に於いて大義名分が立てにくい、北朝鮮周辺には一時的であっても混乱を嫌う中国本土や、態度をはっきりと示さぬロシアが北朝鮮に隣接する国として存在していること、そして、ここで強引に軍事行動に出ると、中国本土やロシアをも巻き込む形で、更なる対立を深める危険性があること、そして、何よりも欧州が不安定な中、更なる混沌を拡大するような現実を生み出すであろう、北朝鮮に対する戦線拡大を自ら仕掛けていくことは不合理であり、リスクが高過ぎると国際金融筋は見ていると思います。
そこで彼らの言う、北朝鮮対応のシナリオのトップに出て来ているものは、「現状維持」であります。この現状維持の意味するところは、南北朝鮮の存続、朝鮮半島の現行の秩序維持、金正恩政権の存続、であり、その前提として「北朝鮮は即時核開発とミサイル開発を停止、きちんとした証拠を付してその真意を米中に伝える。これにより、米中は北朝鮮からの核攻撃リスクを事実上回避する。一方、金正恩政権にとっては、核開発とミサイル開発の中止は朝鮮人民に対する自らの威信低下に繋がるとして、こうした米中の申し入れを受けぬ危険性があることから、表面的には核開発とミサイル開発が完了したように見せても構わない、但し、米中にだけは、上述したように証拠を付して核開発とミサイル開発を中止したことを速やかに報告せよ」との方針を以って対応しているようであります。
そして、こうした背景もあって、北朝鮮リスクがこれほど指摘されていても、アジアの金融市場の動揺は限定的であるとも思われるのであります。しかし、トランプ政権を支える柱のもう一つの大きな勢力であるところの国防省筋は、北朝鮮、そしてその背後に見え隠れする中国本土やロシアに対しては、国際金融筋ほど寛容ではないようです。即ち、北朝鮮の核開発とミサイル開発の流れはこれまでの経験からしても止まぬであろう。そうであるとすれば、今が北朝鮮を叩く大きなタイミングである。また、万が一、核武装する北朝鮮と中国本土and/orロシアが、今後、提携してくることとなれば、米国の覇権はアジア地域のみならず世界的にも大きく低下する危険性を持つと考えているようで、北朝鮮に対してはかなり強硬姿勢のようであります。こうした国際情勢の中、当の北朝鮮がどのように反応してくるかも不確かであり、中国本土やロシアの出方によっては、アジアでも混沌が更に深まる危険性もあり、私としては不安が募ります。(おわり)
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