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2007-03-16 00:00
日豪共同宣言を歓迎す:目指せ、JANZUS
佐島 直子
専修大学経済学部教授
さる3月13日、日本の安倍晋三総理大臣とオーストラリアのジョン・ハワード首相は、「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に署名した。今後、日本及びオーストラリアは、「安全保障協力を推進するため、具体的な措置を伴う行動計画を策定」し、年次ベースで「定期的な大臣間の対話」、「外務・防衛両省の合同対話」を実施して、「戦略対話を強化」する。長年、日豪の安全保障関係の重要性を唱え、この日の来るのを心待ちにしてきた者として、喜びに耐えない。マス・メディアの扱いの「そっけなさ」には失望しているが、この共同宣言が、今後の日本の戦略的選択肢に与える影響は少なくないことを改めて強調しておきたい。
冷戦期、西側陣営の「南北の錨」と呼ばれた日豪は、冷戦後の1992年、カンボジアにおける国連平和維持活動で共同して主導的な役割を果たして以来、地域安全保障における協調関係を強く意識してきた。また、1996年には、「日米安保共同宣言」、「米豪安保共同宣言」を相次いで発表し、冷戦後も米国を通じた安全保障上の連携を維持していることを確認したが、2001年の同時多発テロ後、より直接的な安全保障協力の機会を増した。陸上自衛隊が派遣されたイラク・サマーワの治安をオーストラリア軍が担い、共同してその復興支援に当たったことは記憶に新しい。
もはや、日豪の政治的協調と安全保障上の連携は恒常化しており、いまさら共同で宣言を発表するまでもない、と感じる関係者もいることだろう。しかしながら、これまでの日豪の安全保障関係は、あくまでの折々の状況に対応する「アド・ホック」なものである。協力関係のバックボーンは、時に国連であり、時に米国主導の有志連合であった。日豪の安全保障関係を直接担保する条約、包括的な協定は存在せず、両国の安全保障協力は、長年にわたる両国の友好関係、密接な経済関係、米国を通じた間接的な同盟関係、共有する価値観や利害などによって、ケース・バイ・ケースで確認されてきたものである。
両国の直接的な安全保障関係の強化には、それぞれの国内に幾許かの克服すべき障壁があり、必ずしも無条件で推進されてきたわけではない。これらについては、拙稿「日豪に戦略的関係は築けるか?(『外交フォーラム』2006年6月号参照)。この点、今回の共同宣言は、安全保障に特化した形で両国首脳が具体的な二国間の関係強化を取り上げた初めての国際的確約であり、アジア・太平洋地域において日本とオーストラリアが、「民主主義という価値並びに人権、自由及び法の支配」を主導的・主体的に担うことを表明している点で画期的である。
確認された日豪共通の立場は、表層的な外交の動向などよりはるかに重要である。「六カ国協議」における日本独自の主張が「外交的孤立」などと大袈裟に喧伝されているが、こんなことに惑わされてはいけない。オーストラリアは、日本外交を支えるオールタナティブな同志(マイト)である。願わくは、今回の合意を、日米豪関係にユニークな小国ニュージーランドを加えたより安定的な多国間の安全保障取極め(JANZUS)へと深化させたい、というのが筆者の自論だが、これについては稿を改めることといたしたい。
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