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2017-04-17 00:00
水道民営化は郵政民営化以上の大問題では?
倉西 雅子
政治学者
近年、新自由主義の強い影響下にある日本国政府は、公営事業の民営化を成長戦略の一環として位置付けてきましたが、この流れに沿うように、地方自治体である浜松市が、国内初のコンセッション方式による水道事業権の売却に踏み出したと報じられています。落札したのは仏ヴェオリア陣営であり、今般の民営化とは、同時にインフラ事業の海外企業への開放を意味しています。
コンセッションの譲渡が、植民地支配の基本ツールであったことは、今では、殆どの人々の記憶から消えています。特に日本国では、自らの歴史において植民地支配された経験がないため、そのリスクに関しては見過ごされがちです。しかしながら、インフラ事業とは、国民の生活、並びに、産業を支える基幹産業であると同時に、独占が成立し易い分野でもあります。今般の浜松市の民営化でも、契約期間の20年に亘ってヴェオリア陣営が水道事業を独占するのです。報道では、民営化の常套句である“民間の効率的ノウハウの導入”や“自治体の負担軽減”といったメリット面については説明していますが、肝心の水道料金への影響については触れていません。海外の事例では、水道事業の民営化により料金が逆に上昇するケースが問題視されており、浜松市の場合も、ヴェオリア陣営は、先端技術の導入などにより効率化を図る方針を示していますが、新技術の導入に際して要するコストは、水道料金に一方的に転化される可能性もあります。また、地方自治体は、売却によって水道事業の予算が不要となるのですかから、その分を減税等で住民に還元したり、同事業に宛ててきた公務員の人員も削減しなければ、住民も納得しないはずです。
郵政民営化に際しては、衆議院が解散され、争点選挙によって国民に是非が問われましたが、今般の民営化は、郵政事業よりもさらに生活に密着する分野でありながら、表舞台で国民に問うこともなく、法改正によって知らぬ間にコンセッションの売却を推進しています。しかも、前者のケースでは、外国企業への売却は想定外でしたが、今般の民営化は、民営化=市場開放であるため、日本国の生活、並びに、経済基盤が外国企業に牛耳られるリスクは無視できないのです。国家レベルでの“切り売り”を止めるのは、国民は、もはや地方自治体レベルで阻止するしかないのではないでしょうか。
公営事業と言いますと共産主義的なイメージがあり、これまで国民の多くも民営化を支持してきましたが、近年では、民営化の弊害も顕在化しています。今日の国家は、公営化か、民営化の二者択一ではなく、どの分野がどちらに適しているかを慎重に勘案し、選択的な民営化を実施すべきです。少なくとも、生活、並びに、産業インフラに関する事業分野に関しては、海外企業の参入は施設建設や技術導入までとし、事業権の分野の民営化は控えるべきと思うのです。
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