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2017-04-07 00:00
中国での学術交流に期待する
池尾 愛子
早稲田大学教授
中国の山東省の大学では、「自分が会員である学会の大会あるいは国際会議を開催してよい」となっているようである。この流れで、2018年には、私の関係する学会2つで山東省での会議の開催が予定されている。一つは、2016年8月30日の本e論壇への私の投稿「国際二宮尊徳思想学会東京大会に参加して」において紹介したように、同学会(INSA)第8回大会の開催予定である。もう一つも、日本関係の学会である。学会の場合、年次大会あるいは準大会の開催地が決まるのは、通常は1年以上前のことであろう。今年9月半ばには、同省の大学で新たに日本関係の学会が関係するシンポジウムの開催が予定されているとのことである。実り多い学術交流の成果を期待したい。
その一方で、南開大学のように国際会議を開催しなくなったところもある。昨2016年8月にそのように伝えられた。以前は同大学の2つの組織から国際会議の案内をいただくことがあった。しかし、昨年以来、案内は途切れ、知合いに問合わせの電子メールを送っても返事が返ってこなくなっている。残念ではあるが、学術政策に大きな方針転換があったとしても、それは想定される範囲内のことであろう。
中国に関心のある学生達には、次の図書を読むことを薦めている。 第1に、呉敬璉(Wu Jing Lian)教授グループ(青木昌彦監訳、日野正子訳)の 『現代中国の経済改革』、NTT出版、2007年)で、本e論壇で2007年8月に紹介した。第2は、天児慧氏の『中華人民共和国史 新版』(岩波新書、2013年)、『「中国共産党」論:習近平の野望と民主化のシナリオ』(NHK出版新書、2015年)等である。 天児氏の2015年の本は、学生からコメントを求められて読み、その結果、現代中国を知るには適当な本だと学生達に紹介している。ヨーロッパの研究者達の中国認識とかなりギャップがあるのではないか、という感想も持っている。
文化大革命中の出来事は、本e論壇の2014年9月10日の投稿「3年ぶりの中国訪問」と2015年9月26日の投稿「天野為之と福沢諭吉」でごく簡単に触れた。当該期間には、大学は閉鎖され、他の学校では教師全般が生徒達に迫害された歴史があることを、中国の教職者達は海外の研究者・教職者達にぜひ理解してほしいと思っているようなので、これも紹介しておきたい。中国でも歴史は重要である。私は社会科学・歴史分野での学術交流がどう進むかに関心がある。社会科学でも国際交流自体がその目的になることはないであろう。しかし、交流をしていかないと、国際社会、地域社会がかかえる諸問題・課題を見定めて解決の道筋を立てることはできないであろう。山東省の研究者・教職者達の活躍に期待したい。
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