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2017-04-07 00:00
核禁止条約は“核保有国”の陰謀では?
倉西 雅子
政治学者
今月27日から、ニューヨークの国連本部で核禁止条約の制定に向けた会議が開催されます。オーストリアといった非核保有国が主導し、113カ国の賛成を得ての開催ですが、アメリカやロシアといった核保有国は不参加であり、その行方は未知数です。
核保有国が参加しない核禁止条約であれば、非核保有国の安全保障が現行のNPT体制よりもさらに弱体化することは疑いようもありません。NPT体制においても、結局、核の拡散は防止することはできず、今や、北朝鮮やイランまでもが核保有に王手をかけています。安保理の常任理事国以外にも、イスラエル、インド、パキスタンといった諸国が既に核を保有していることは公然の秘密であり、世界全体を見ますと、一部の国のみが、核という他の諸国には保有が許されない大量破壊兵器を独占しているのです。仮に、核禁止条約が制定され、核保有国、並びに、核保有推定国が参加せず、非核保有国のみの加盟によって発効するとなりますと、非核保有国は、核の傘を含めて核の抑止力という防衛手段を放棄することとなります。実際に、核禁止条約に核保有国が参加する見込みがない以上、核禁止条約の制定は、非核保有国が自国の安全保障をさらに脆弱化する結果しかもたらさず、全く以って非合理的な行為なのです。
核禁止条約の制定が非核保有国の利益にならないとしますと、この条約の締結を勧めているのは、一体、どのような勢力なのでしょうか。主導国としてはオーストリアやメキシコの名が挙がっていますが、その背景には、核保有国、あるいは、潜在的核保有国の思惑があるのかもしれません。第一の目的は、非核保有国の核保有を完全に禁止することで、自らの軍事的優位を固定化することです。中国や北朝鮮といった諸国は、公然と核で周辺諸国を脅していますので、国際法によってこれらの諸国の核保有を封じることができれば、核の威力は倍増します。第二の目的があるとすれば、NPTの再検討会議において、核保有の条件緩和等の提起がなされることを予め封じることです。非核保有国の関心や議論を核禁止条約に集中させておけば、NPT体制の不平等性に対する非核保有国からの不満の表出を押さえることができるのです。
何れにしましても、核禁止条約の交渉は、壮大なる時間の無駄となるどころか、北朝鮮等を含めた“核保有国”の利益に資するという本末転倒な結果となりかねません。あまりに非現実的である故に、核禁止条約については陰謀を疑ってしかるべきレベルではないかと思うのです。
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