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2017-03-22 00:00
(連載2)中国本土の軍事的な動きについて
真田 幸光
大学教員
そして、実際に中国本土政府が示した「2017年の中国本土の国防予算案」を見ると、その伸び率が前年対比7.1%前後となり、中国本土の国防予算は史上初めて1兆人民元を超え、また、大国主要国の中でも国防予算伸び率の高い国となっています。即ち、中国本土政府・財務部は、2017年予算案の国防費が前年実績対比7.1%増の1兆225億8,100万人民元となったと発表しているのであります。
こうした背景には、宇宙開発なども含め、米軍に対抗できる海・空軍力の拡充を急ぐと言う中国本土の戦略があると見られており、やはり「米国やロシア、英国、フランス、或いはインドなども含めた覇権国家、覇権国家を経験した国家を意識した国々に対する対応」とも見られます。ここで、国防予算の規模を国別に見ると、米国が7,300億米ドルを超え、900億米ドル前後の中国本土よりも圧倒的に多く、こうした数字から見ても、現在は米国が軍事最強国であり、名実共に「世界の警察」的役割を果たしてきているとも言えますが、その相対的な地位は確実に低下してきています。従って、上述したような防衛予算の伸び率も気に掛かるのです。因みに、日本も防衛予算規模は600億米ドル程度あり、米国との連携による防衛装備は近代化され、自衛隊員の数は少なくとも、防衛能力は高いと見られています。
こうした中、中国本土は、現実との折り合いの中で、南シナ海、東シナ海、インド洋での軍事的活動を拡大すると共に、その為の防衛予算も積み増してきていると思いますが、世界の注目は「制宙権」にあります。軍事的にも、情報を軸とする経済的にもその意味が高い「宇宙に対する支配、具体的には先ず、宇宙ステーションと人工衛星の運営」には高い関心が向けられています。そして、中国本土は、その宇宙開発を米露とは協調せず、単独で行い、ここに、更に多くの国家予算を注ぎ込もうとしてきています。近いうちに、中国本土の宇宙ステーション設置の動きも顕在化してくると見られています。尚、中国本土はこうした中にあって、制空権、制宙権を意識したミサイル防衛システムにも関心を払っており、米国のスタンダードを基に米国が主導するTHAADには強い反対姿勢も示す、よって、その導入を決めた韓国の現行政権に対してはかなり強烈な圧力を掛けているとも見られるのであります。
こうした中にあって、日本にとっては、尖閣問題をはじめ多くの地政学的リスクとなっている中国本土、虎視眈々と覇権拡大を狙う北方四島問題の対峙者・ロシア、竹島問題を持ち、日本との連携を拒んでいるとしか見えない韓国、核のリスクが顕在化する北朝鮮、尖閣諸島に関しては独自の主張する台湾など、軍事的な視点から見た問題が山積しており、同盟国・米国との連携は現実との折り合いの上では不可欠でありましょう。しかし、それをベースとするとしても、英国連邦を抱え、王室を持つ英国との更に強い絆を復活、その上で小国ながらも力を持つ、永世中立国・スイスとの連携、見逃せない国家・イスラエル、影響力を増すシンガポールなどの国々と緩やかな連携を取りながら、「世界に尊敬される、そしてなくてはならぬ国家」として生きていくことが最善の策であると私は考えています。中国本土の力が増す中、風雲急を告げないことを祈るのみです。(おわり)
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