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2017-03-10 00:00
膨張続ける中国マネー・バブル
田村 秀男
ジャーナリスト
1980年代末、バブル経済ピークの日本でも、カネに糸目をつけず飲み食いする御仁がいた。さて、中国のマネー・バブルはどうなのか。日本、米国、中国と欧州連合(EU)の現預金総額についていうと、中国のそれは2600兆円を超え、958兆円の日本はもとより、中国より国内総生産(GDP)規模がはるかに大きい米欧をも圧している。1人当たりの現預金で見ると、人口13億人以上の中国は日本より少ないのだが、約1割超とみられる中間層以上に限定すると、世帯当たりの現預金は平均で2000万円程度あっても不思議ではない。実際に、知り合いの上海市民に聞くと、預金レベルは2000万円以上、マンションを2軒持つのが普通だという。
そのマネーパワーが今、海外を席巻している。大いに飲食や観光で散財してくれるのは結構だが、不動産投資となると各地の景色を中華色に染めかねない。中国人による不動産の爆買いが進む豪州では町並みの景観保全のために、自治体政府が建築審査基準を厳格に適用しようと四苦八苦している。日本でも、産経新聞で適宜連載の「異聞 北の大地」が報じるように、中国人投資家が札束にモノを言わせて北海道各地を買い占めている。国土交通省は規制どころか、外国人による不動産買いを円滑にするためのガイドラインを作成している。まとまった頭金をポンと用意する中国人旅行者目当てに、永住権がなくても外国人向けに住宅ローンを提供できるよう内規を変えた大手都市銀行もある。
そこで気になるのは、チャイナマネーの膨張ぶりだ。2016年末の前年比増加率は11・3%で、日本は4%に過ぎない。中国本土は不動産市況の悪化や経済成長の減速が目立つが、カネだけは従来通り2ケタ台で伸び続けている。中国人民銀行はもともと外貨準備(外準)増加額に合わせて人民元を発行していたが、14年からは外準と切り離した。外準の裏付けのないカネがどんどん増え、中国からは年間100兆円規模の資金流出が起きている。それでも人民元が紙切れにならないのは、当局が外準を取り崩して人民元相場を買い支えているからだ。
日本や米国が中国のマネーパワーを封じ込めたいなら、変動相場制に移行させるしかない。市場原理にまかせると人民元相場は暴落しかねず、対外投資はやむはずだ。だが、トランプ大統領だって、中国企業の対米投資を大歓迎するのだから、先が思いやられる。
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