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2007-03-11 00:00
拉致問題に関する日本政府の説明振りに思う
田島 高志
東洋英和女学院大学大学院客員教授
今日の如く日々激動しグローバル化した国際社会において日本が長期的な国益の維持と増進を計るためには、世界の日本に対する一般的な尊敬と信頼の念に依頼するのみではなく、日本の具体的な個々の行動に対する国際的支持を常に確保するよう戦術的な努力を払うことが益々重要になって来たと感ずる。例えば、最近の日朝二国間協議における北朝鮮の「拉致問題」に対する頑なな態度に対し、日本は「拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ない」との基本的態度を繰り返し表明しているが、それは当然の正しい基本的態度ではあっても、今回の二国間協議の結果に対する記者会見などでの応答の中に日本のそのような基本的態度は「何故なのか」という理由付けが短い言葉で加えられていない点、戦術的に完全な反応とは言えないと思われる。
例えば、「拉致問題は、北朝鮮政府により日本国民に対して最近犯された人道上の問題であり、人権の問題であるので、それが解決されるまでは、これから仲良くお付き合いしましょうという国交正常化交渉は無理である」とでも付け加えれば、内外の記者もその部分を加えて報道するのではなかろうか。各国が共有し納得し得る人道や人権などの普遍的価値に基づく理由を短くとも付加することにより、他国の政府や国民も日本政府の「拉致問題」に対する毅然たる態度の当然さ、妥当性についておぼろげながらもより容易に理解ないし肯定的印象を持つのではなかろうか。
そもそも「拉致問題」は、日本では国民が熟知している大問題であるが、国際的には必ずしも広く知られ、理解されているとは言えない。米国でさえ、大統領を初め行政府は日本を支持してくれているが、米国民が広く知り理解しているとは言えない。韓国は、政府も国民も知っている筈であるが、自国民にも拉致問題があるにも拘らず、熱意はない。他のアジアや欧州の国々では大方の国民は知らないかも知れないのが現実である。
しかし、北朝鮮の核問題は世界の重要問題であり、どの国民も核に関する六者協議の行方には関心があると言えよう。今後もし六者協議の進展が遅れた場合に、「拉致問題」に対する日本の過度の固い態度のために進展が遅れたなどという誤解を他の国々に与えたり、そのような言いがかりを北朝鮮に与えないためにも、今から日本の態度の正当性と妥当性を日本の何れの友好国の政府と国民にもしっかり植え付け、共有してもらうために、「拉致問題」に対し「何故」日本は固いのかを世界世論を対象に簡単明瞭に繰り返し言及し、説明し、広報して行く配慮が必要ではないかと思われる。そのような配慮は、日本の抱える領土問題(北方領土など)その他多くの問題に関する日本の立場に関しても同じことが言えるのではないかと思う。
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