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2017-02-09 00:00
緊縮財政日本はトランプの矛先になる
田村 秀男
ジャーナリスト
米トランプ政権のスタート後、例えばトランプ氏が突如ツイッターで「円安はけしからん」とつぶやくだけで、これまでの米株高および円安・ドル高から日米為替相場は反転しかねない。トランプ氏は中国を「為替操作国」として非難し、中国からの輸入製品に対して45%の報復関税をかけると息巻いているが、日本からの対米輸出が急増するようだと日本にも矛先を向けかねない。こうしたリスクが消えない以上、日本としてトランプ相場頼みを避け、内需主導型成長を目指すのは当然だし、安倍晋三政権がそうした路線を明確にすればトランプ政権との緊密な関係を築けるだろう。
その鍵は、財政政策にある。トランプ政権は共和党保守本流の伝統的な緊縮財政に背を向け、財政赤字にこだわらずインフラ投資による財政支出拡大をめざしている。安倍政権は昨年秋の大型補正により、財政重視を打ちだしたが、与党への財務省の影響力は根強く、緊縮財政路線を廃棄できないでいる。従来の発想、枠組みに縛られないトランプ流に比べると、日本伝統のやり方は景気が下降してあわてて補正を行うという一貫性のなさだ。
大型補正予算を組むゆとりがあるなら、当初予算からきちんと計画して、インフラ、教育、防衛、子育てに政府資金を投入するほうがはるかに効果的だろうに、そうしない。中長期的な財政資金の投入を継続することを鮮明にすれば、家計も企業も将来に対する確信が生まれ、消費や設備投資・雇用を刺激するはずなのに、いつも追い込まれてからの財政出動で、しかも一過性である。そこで予算をやりくりするのがエリート財務官僚というわけだが、弱々しい成果しか挙げられない。また、税収が増えても、財政支出を通じて民間に還元しないと、民間の所得が奪われる。安倍政権はアベノミクスを本格的に作動させた2013年度、予算総額の前年比増減額から税収増減額を差し引いて算出した緊縮度はゼロに近かった。しかし、翌14年度には消費税増税と歳出削減の超大型緊縮財政に踏み切り、15年度は緊縮を続け、16年度も当初予算でさらに緊縮を継続。すると消費は不振に陥ったままで、物価は下落し、デフレ局面に舞い戻った。税収も減り始めた。そこで2、3次の補正予算を組んだ結果、拡張型に転じた。
17年度当初予算はトランプ効果による円安・株高の陰に隠れて目立たないが、補正後の16年度予算に比べてかなりの緊縮になっている。円高、株安に反転しようものなら、またもやあわてて補正という図式がみえみえだ。これほどの経済大国でありながら、事なかれ主義の官僚の采配に国家予算が委ねられる先進国はほかにあるのだろうか。
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