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2017-02-08 00:00
韓国政府のAI活用の期待と不安
倉西 雅子
政治学者
日経新聞の一面に“AIと世界”というタイトルで“政治の限界をAIが越えられるのか”という問題を問う記事が掲載されていました。同記事に拠りますと、政治混乱の最中にある韓国政府が、「AI政治家」の開発組織を発足させた米国人研究者であるベン・ゲーツェル氏に協力を求めたというのです。「AI政治家」は、2018年に公職を担う予定なそうですが、韓国政府が「AI政治家」を導入する背景には、感情の起伏が激しい国民性と“ポピュリズム”への懸念があるそうです。様々な領域で韓国との間に軋轢を抱えている日本国には、「AI政治家」の登場に対する期待と不安があります。
期待としては、竹島問題や慰安婦等の問題が、「AI政治家」によって、事実に基づく客観的な判断が為されることです。例えば慰安婦問題を取り上げれば「AI政治家」への“報告”、否、データ入力に際して、当事の慰安婦の給与、契約形態、勤務状況、国内の規制法、戦時下の法令、国際法、性別・年齢別人口統計、国民所得水準…といった、ありとあらゆる情報を正確に入力すれば、韓国の教科書に記載されているような日本軍による“性奴隷化”や“大量虐殺”などといった虚偽の記述は否定されることでしょう。また、竹島問題についても、「AI政治家」に両国の主張を証拠と共にデータ入力し、国際法に照らして客観的、かつ、公平に判断してもらえば、日本領と回答、あるいは、国際司法裁判所に付託すべしと述べるはずです。韓国国民の反日感情によって遠のいていた問題は、一気に解決するかもしれません。
こうした期待がある一方で、そもそもAIの判断は、インプットされる情報にもとづく点を考慮しますと、「AI政治家」のソフト設計の段階や情報入力の段階で、ある特定の傾向を示す情報しか入力されず、“洗脳”されてしまうケースも想定されてきます。また、データを予め取捨選択し、自らに都合のよいデータのみを入力するかもしれません。仮に、「AI政治家」の役割が、人間の政治家が掴めなかった民意を正確に掴むことに置かれているのならば、「AI政治家」は、“全ての事実”に基づく客観的、かつ、公平な判断ではなく、韓国の国民性や感情に則した判断が出されてしまう可能性がないわけではないのです。
この計画では、AIが使うデータや学習速度によって複数の判断がアウトプットされるため、最終的には、国民投票で決定するそうです。前者の“期待シナリオ”であれば、国民投票で否決されそうですし、後者の“不安シナリオ”では、「AI政治家」が登場しても、何の改善にもならないどころか、権威好きの国民性が禍して、「AI政治家」の権威を盾に対日要求が強まりそうです(もっとも、実際に実現したならば、民主主義の原則からの逸脱や「AI政治家」の責任問題も発生…)。果たしてこの計画、どうような結末を迎えるのでしょうか。
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