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2016-10-28 00:00
(連載2)国際海峡制度について思う
緒方林太郎
衆議院議員(民進党)
国連海洋法条約上、通過通航制度でも「分離通航帯」を設ける事が出来るとなっていますので、まずは日本の主権をきちんと確保した上で、如何なる意味において(かなり自由な通航を可能とする)通過通航制度を適用するかは検討可能なはずです。そもそも、今の状態ではこれら5海峡の公海部分では「通過」せずに、海峡をウロウロしても(海峡の実態がどうであるかはともかくとして)可能なのです。もっと言えば、津軽海峡にはJ-Powerの大間原子力発電所があります。大間原子力発電所から3カイリの場所にずっと他国の船舶が停泊して監視していても何らの問題もないというのは本当に良いのかというふうに言うと、問題点をリアルに感じてもらえるでしょう。
では、「通過通航制度」とは何ぞやということになります。この政府答弁が良くないのです。いつも、これについては「各国の実行の積み上げが十分でなく不確定な面もある」といった答弁になります。しかし、世界の主要な海峡について言えば、実はボスポラス・ダーダネルス、マゼラン、ジブラルタル、マラッカといった海峡の通過については、国連海洋法条約上の通過通航制度ではなく、特別条約で整理されています。なので、これらの主要海峡の実行は参考になりません。となると、「各国の実行の積み上げが十分でなく」というのは、「何処の海峡の実行を見ているのだ?」という疑問が出てきます。国連海洋法条約が出来て20年の間、ずっと見続けてそれでもまだ十分でないものがいつまで見続けたら十分になるのか、ここは政府側に知的怠惰があると思います。
これまで日本は国際海峡、通過通航制度については、「我関せず」的なところがありました。それは「日本には国際海峡はあるが、領海法で公海部分を開けているので通過通航制度の適用がない」という点と、「各国の実行の積み上げが十分でなく、通過通航制度がなんなのかは不確定」という点が背景にありました。だから、中国から「トカラ海峡は国際海峡であり、我々は通過通航制度を適用しているだけだ」と言われた時に戸惑うのです。あの中国の主張は、日本の海洋政策に対する黒船だったと思っています。今こそ、真正面から国際海峡制度に向き合うべきだというのが私の思いです。
質疑の最中にも触れましたが、本件は「非核三原則」とも関係します。そこに踏み込み始めると、とてつもなくテーマが大きくなります。また、通過通航制度を導入しようとすると、韓国やロシアとの間でそのあり方を交渉しなくてはなりませんし、国内でも、主権はあるけどそこで自由度の高い通過通航制度を認めるという5海峡特有の特別制度を作らなくてはなりません。とても大きな話題になっていくのです。そこは稿を改めたいと思います。(おわり)
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