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2016-10-18 00:00
(連載1)アベノミクスと日本のあり方について
真田 幸光
大学教員
色々なご意見はありますが、私はアベノミクスは正しい政策であると考えています。経済を分類すると、一つの分類の仕方として実体経済、或いは実物経済、金融経済に大別でき、アベノミクスはその双方を上手に刺激して景気拡大をしていこうとする政策であることから、その意味では正しいと考えます。そして、主として金融経済を刺激しつつ、実体経済の拡大を誘引していこうとする政策が、アベノミクスの三本の矢のうちの金融政策、財政政策であり、実体経済そのものを直接刺激しようとするものが成長戦略であります。こうした政策のコンビネーションも素晴らしいと私は思います。
一方、アベノミクス政策の目的、目標は何であると安倍政権が宣言しているかと言えば、それは「デフレ経済からの脱却」であり、私はこれを解釈すると「アベノミクスによって実体経済を拡大基調に戻し、その上で広く国民全般に『景気拡大の実感を味わってもらい、富の再分配を再び実感してもらいたい』としている」ことにあると理解しています。「而して実態は?」と見ると、ここにアベノミクスの一つの問題があると私は考えています。
これは、多くの方がお気づきのことであります。アベノミクスは金融、財政政策のみワークしていて、成長戦略がほとんどワークしていないという点であります。現在政府は、金融緩和を実施して、市中にバブルとも思われるほど資金を放出した上で、財政状況が厳しい中、財政出動を伴う景気対策を打って景気拡大をしようとしており、これは一時的な刺激策としての効果はありましょうが、しかし、国民や民間企業の心の中では現在、「多くの国民には将来に対する不安を更に増長し、その結果として国民の財布の紐は固くなったままで、日本のGDPの約6割を占める個人消費を一向に刺激しない。そうした状況を見て、日本政府は企業に対して『賃金を引き上げよ』と強制しようとしているが、これは正にフライングであり、社会主義国家でもなく国営・国有企業でもない企業にとっては余計なお世話であるし、出来る限りの協力はしようとしても政府の思惑にまで賃金上昇はしないし、また出来ない、或いはすべきではない。こうして日本国内では、国民も企業も政府に対する不信感を増す」という状況に入ってきていると私は思います。
こうした状況にあるにも拘らず、日本政府はまた「デフレからの脱却に関する目に見える目標として2%の物価上昇」と言ってきましたが、そもそもデフレとは「供給よりも需要が弱い結果として起こるものであり、その為に物価も下落している状況である」訳でありますから「物価だけを意図的に上昇させてしまうと市民生活も企業活動もコストだけが上がる」と言う結果しか齎さず、だからこそ需要を生み出すための活動を刺激するための「成長戦略の発動」が不可欠なのです。(つづく)
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