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2016-10-14 00:00
(連載1)地方の元軍人や民兵による社会不安リスクを抱える中国
児玉 克哉
社会貢献推進機構理事長
中国は軍人数で世界のトップである。正規軍である人民解放軍の人員数は、現役兵228万5千人、予備役51万人と推定されている。(『2013年ミリタリーバランス』2012年11月時点の数字) これでも1980年代からかなりの削減がされてきている。人民解放軍の規模は、1985年に10万人、1997年に50万人、2003年に20万人、2015年に30万人と、4回削減されている。中国は軍隊も、徐々に量から質への転換が行われている。正規軍の他に準軍事組織として、人民武装警察(武警)が66万人、中国民兵が約800万人いるといわれる。中国民兵は農業や漁業などの主職業を持ち、必要な時に手当をもらって軍組織に加わるものである。尖閣諸島などに威嚇目的でやってくる「漁民」の中にはこうした民兵が含まれているといわれる。実際に漁業もやっているだけに境がわかりにくい。一般の漁民とはいえず、一定のトレーニングを受け、簡単な武器を持っている。
北京市中心部の中国国防省前で10月11日に、迷彩服姿の元軍人らとみられる約1,000人が集まり、抗議デモを始めたことが各メディアで報じられている。毎日新聞(2016年10月11日付)によると、「参加者の一人は取材に『退職後の手当てが不十分なまま人員が削減されることへの不満だ』と目的を語った。習近平指導部が昨年から断行する兵力30万人削減など大規模な軍改革への不満が背景となった抗議活動の可能性が出てきた」という。地方での抗議デモではなく、北京で行われたことは注目に値する。不満が地方だけに封じ込めることができなくなっているのだ。
中国の軍隊組織は共産党指導のもとに、規律と統制がとれていると思いがちだが、実際には巨大な国の巨大な軍である。地方にいくと、コントロールがあまり効かない状態だといわれる。コントロールの効かない軍ほど怖いものはない。
かつては人民解放軍の軍人の待遇は非常に悪く、給料の遅配も多かったと言われる。相遇も徐々に改善されてきた。しかし「公務員」の枠を超えるわけではない。一般の公務員には賄賂や口利きの「稼ぎ」があり、給料以外の収入が実質的になっていた。しかし軍人にはそうした機会が極めて限られる。軍用品や食料を横流しにするくらいしかない。それらは大々的にやればすぐに足がついてしまう。軍人は一般の公務員よりはやや高めの報酬基準になっていても、賄賂収入が少ないだけに相対的な不満を抱くようになっている。そこに兵力30万人削減が行われてきたのだ。地方では元軍人のいい受け皿はなく、退職後の手当が不十分であれば、怒りは中国政府に向けられるのだ。元軍人は、軍人としての訓練を受けた人だ。兵器の扱いも爆弾の扱いもよくわかっている。またちょっと前まで軍組織にいたので、軍内の元部下や友人などとのネットワークもある。彼らが不満分子として、地方の既得権益者らと結びつくなら、地方からの反乱の可能性は極めて高まる。現在、中国では政財界での主導権争いが起こっている。地方で王国を築いてきた人が一夜のうちに糾弾され、投獄されることもありえる。一気に没落するのだ。反主流、あるいはそうなりそうな人は、元軍人らと手を結ぶことも十分に考えられる。民族問題や地方独立運動と連携することもあり得る。(つづく)
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