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2016-10-12 00:00
ADBとAIIBの加盟国数くらべは無意味
倉西 雅子
政治学者
先日、2016年9月30日は、中国主導で設立されたAIIBの新規参加申請の締切日であったそうです。報道によりますと、カナダを含めて20ヶ国以上の国が参加を申し込んだそうです。参加国の数の上ではAIIBがADB(アジア開発銀行)を上回るため、マスコミ等では、しきりにAIIBがADBを凌ぐ国際開発金融に躍り出たかのように報じています。新規加盟の20カ国の国名は公表されていないものの、この数には驚くことはありません。何故ならば、ADBとAIIBの参加国を比較しますと、一つの大きな特徴が浮かび上がるからです。
ADBもAIIBもその名称に“アジア”が含まれており、アジア太平洋地域に限定された組織と見なされがちです。実際に、AIIBのこれまでの融資対象を見ましても、一先ずは、アジア地域の融資案件です(AIIBの最初の融資先は、ADBとの協調融資によるパキスタンの高速道路建設プロジェクト…)。しかしながら、参加国の顔ぶれを見ますと、AIIBには、アジア太平洋地域のカテゴリーに、イスラエルを含む中東諸国が数多く含まれており、その対象が大きく西方に広がっています。また、地域外のカテゴリーには、南米地域のブラジルやアフリカ地域の南アフリカの名も見え、対象領域が凡そ全世界をカバーしているのです(全BRICs諸国が参加…)。一方、ADBでは、アジア太平洋地域のカテゴリーにあって中東地域の参加国は殆どなく、これまでのところはAIIBには加わっていない太平洋上のミニ国家諸国が多数参加しています。両者の違いは、AIIBでは、トルコがアジア太平洋地域に含まれる一方で、ADBでは、地域外に分類されている点にも象徴されています。
AIIBの特徴となる対象領域の広さは、同機関が、習近平主席の掛け声の下、中国中心の広域経済圏構想である“一帯一路構想”を実現するために創設されたことを想起すれば頷けます。ヨーロッパに通じるユーラシア大陸全域を視野に収めると共に、BRICs諸国を束ねる形でアフリカ大陸や南米にまで“中国の夢”を馳せているのです。言い換えますと、AIIBの実態とは、“中国の夢”のための“世界インフラ銀行”なのです。しかしながら、AIIBの組織や融資決定の手続きには不明瞭な部分が大きいことは、既に指摘されているとおりであり、AIIBの‘世界のインフラ銀行’化は、世界規模において中国の腐敗体質が拡散するリスクともなります。
以上に述べたように、ADBとAIIBとでは、その性質が違っているのですから、単純に参加国数を比較して優劣を競うのは無意味です。また、参加国数が多いことが、むしろ負の要素、すなわち、負債の発生リスクの増大に繋がる可能性もあります。したがいまして、公正な社会の実現といった人類普遍の価値の発展も含めまして、どちらが人類の発展により大きく貢献するのかを基準に、両者を比較してみるべきではないかと思うのです。
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