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2016-10-10 00:00
女性の経済思想史ハンドブック
池尾 愛子
早稲田大学教授
本e論壇(6月26-27日)に書いたように、「女性の経済学・経済思想の歴史」の国際プロジェクトが進行している。国際比較の観点も入っているので、組織者の要請には十分な注意を払わなくてはならない。「少なくとも1770年代以降をカバーする」ことが求められているので、江戸時代から明治・大正時代にかけての女性たちの経済思想・経済学の描き出すのに苦労している。今回はハンドブックを作成しようというプロジェクトなので、研究者だけではなく学生にも読めるようなものにしなくてはいけない。そこで誤りや勘違いが残らないように、先週末、都内での研究会で、日本のケースについて日本語で発表した。
席上、「どうしてそんなにたくさんのエネルギーを女性の経済思想の研究に注ぐのですか?」という質問を受けた。前回の『女性エコノミストの伝記的辞典』(2001年)ではヨーロッパ、北米、ロシアに、日本のエコノミストたちの項目が加わり、今回のプロジェクトではさらに、インド、アラブの女性の経済学・経済思想が加わることになっている。私には「日本のケースを落とされたくない」という思いがある。さらに今回、中国女性の経済学・経済思想も入ってこないかとの期待がある。私だけではなく、組織者たちや他の執筆者たちも同じ思いだと思う。それゆえ、6月の北米開催の学会席上でも8月に中国人研究者に話を持ち掛けてみると約束して、支持を得られたのである。
中国の社会科学系研究者たちがなかなか国外の学会活動に積極的に参加しないので、皆やきもきしているのである。それで、8月の国際二宮尊徳思想学会東京大会での研究発表時に、今回のプロジェクトに中国のケースがまだ入っていないことに言及し、中国のケースについての章を書ける人を見つけてほしいとの思いを込めて、セッション終了後に「女性の経済思想史ハンドブックの章になる論文募集」の案内文と『女性エコノミストの伝記的辞典』1冊を中国人参加者の1人に手渡した。黙って受け取られたが、その後はどうなっているのだろう。
先週の研究会に出席していた中国人研究者にも伝えたけれど、その人にとっても専門外であろう。ただ、「『家事経済学』と似たようなものは中国にもある」とのことであった。「儒者となると男性の名前ばかりが出てくる」という指摘が日本人からなされた。それでも、「中国女性の経済学・経済思想」の章になる原稿または提案文書がそろそろ出てきてもよいのではないかと期待している。皆さん、中国人研究者と接する機会があれば、「中国女性の経済学・経済思想」を書ける人たちを探していることをどうぞ伝えていただきたい。
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