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2016-09-05 00:00
中華の覇権について
真田 幸光
大学教員
中華の国は歴史的には覇権を握った経験があり、また、そのやり方を見ると、ローマ帝国と同様、先ずは侵略、そしてその侵略地域をひれ伏せさせておいてから、その部分的自治を容認し、朝貢に持ち込む、よって、その手綱捌きが絶妙であれば、支配された地域も中華の国を認め、その支配は比較的長期に及ぶ可能性がある、と考えて良いかと思います。そして、現在の中華人民共和国も正にそうした、「中華の国」を意識し、当人たちは、世界に「中華の拡大」に対する警戒感が強まることを嫌って、「中華人民共和国は覇権を目指さない」などと言っているものの、その本心は、「覇権を目指したい」と言うことになるのかと思います。
そして、中国本土は、既にその卓越した外交力に加えて、「制宙権」を加えた軍事力も強化してきていると共に、経済力が見事に備わり、「覇権」に向けて、英米が築き上げてきた、「現行の世界秩序」に対して、果敢に挑戦をし始めたと言えましょう。つまり、経済力の基礎、人口は世界第一位。国内総生産規模は世界第二位。一人当たり平均の国内総生産規模も一万米ドルを間近となっている。経済成長率は世界第二位の規模にありながらも7%弱と成長性が依然として極めて高い。貿易規模は世界第一位。貿易収支、経常収支の黒字基調継続。外貨準備高第一位。鉄は国家なり、その粗鋼生産は世界第一位。造船も世界第一位。研究開発投資規模も世界有数。等々、ざっと外形的な数字で見ても、誰もが認める、「経済大国」となっています。そして、世界全体に対して、「中華人民共和国が頑張らないと世界経済がおかしくなる」と言った、「強迫観念」にも似た感覚を持たせて、「中華人民共和国の存在感」を世界に浸透させてきています。
こうしたステップを踏み、中国本土は、ここに来て、「現行の世界秩序」に対する挑戦を明確に示しつつ、言語では「中華経済権を拡大する過程で中国語圏の拡大を図る」、通貨では「IMFの出資金の単位とも言えるSDRの構成通貨に人民元を加えることに成功、今後は国際商品価格の建値の人民元化、決済通貨の人民元化を更に進めて、中華の国の国際金融覇権を強めてくる」、法律では「中華人民共和国と交流する国との法的根拠を中国本土の法律に変えてきつつある」、製造基準では「ドイツと組み、インダストリアル4.0の標準を世界に拡散しようとしつつある」、会計基準では「新たな会計基準構築の準備に入る」と言ったことをしつつ、宇宙開発を軸とする、「軍事的覇権」を更に強化して、じわじわと、英米のスタンダードから、「中華のスタンダード」にじっくりと時間をかけて変化させ、「眠れる獅子の復活と中華の時代の構築」に向かってくると思います。
これに対して、今年は、「米国の逆襲」が始まり、また、一方で「イスラム圏の拡大の兆候」も見られています。正に時代は混沌から混乱に向かいつつあります。引き続き動向を見守りましょう。
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