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2016-09-01 00:00
(連載2)核兵器の先制不使用宣言について
緒方林太郎
衆議院議員(民進党)
ここまでで分かる通り、核兵器の不使用という観点からはかなり絞り込まれたNSAと言っていいでしょう。なお、現在、ロシアはこのNSAを対ウクライナで守っているのかどうかは微妙です。仮に守っていたとしても、クリミアをロシアの「territory」、場合によってはウクライナ東部を「dependent territory」と見ているでしょうし、ウクライナは米やEUと「association」を強めているとこじつけるのであれば、ロシアによるウクライナへのNSAの機能は、風前の灯火なのかもしれません(実際に核兵器を使うかどうかではなく、ルールとして)。ただ、本件はこれ以上は深くやりません。ただ、アメリカは2010年に以下のとおり核態勢を見直しています。
The United States will not use or threaten to use nuclear weapons against non-nuclear weapons states that are party to the Nuclear Non-Proliferation Treaty and in compliance with their nuclear non-proliferation obligations.(ただし、この後に「生物、化学兵器を使う相手には通常兵器で大規模な報復を行うし、将来の技術発展次第ではこの約束自体を見直すこともある」と念押しはしてある)
これですと、核不拡散条約に加盟し、その義務をきちんと守っている非核兵器国には、アメリカは核兵器を使いませんよ、ということがなります。対ウクライナNSAとの関係で言うと、以下のような点が弱いです。(1)化学・生物兵器による攻撃への核抑止力は(条件付きであったとしても)ない。(2)核兵器国と「alliance」、「association」を持っている国への核抑止力はない。(3)同盟国への言及がない。生物兵器、化学兵器に対する抑止力は、通常兵器に委ねられることになります。当時、アメリカ政府は「単に核兵器を使わない約束をするだけであって、いくら非核兵器国でも行い次第では通常兵器でボコボコにされる可能性はある」と強調していましたが、抑止という観点からは、どうしてもハードルは下がっています。
将来の変更の可能性があるとは言え、ちょっと弱いんじゃないかという感じです。これは恐らく「核不拡散条約に加盟して、義務履行すれば攻撃しない」というメッセージで、例えば、北朝鮮とイランを始めとする国々を核不拡散体制に呼び込もうとしているのでしょう。ただ、この2010年の見直しが世界の不拡散体制強化に繋がったという事実はこれまでありません。誰も撒き餌に食いつかなかったのです。それで、今回のオバマ大統領の「先制不使用」提案です。どういう文言で検討されているのかは知りませんが、2010年の核態勢見直し以上に何をやろうとしているのかがさっぱり分かりません。すごく雑に考えて、「The United States will not use or threaten to use nuclear weapons, except in the case of an attack on themselves by nuclear weapons」とでもするのでしょうか。
ここからはゲームの理論を駆使して分析する必要がありますが、そのメッセージが世界各国にどう受け止められるか、どう受け止められたとアメリカは判断するか、そういう要素を勘案する必要があります。いずれにせよ、上記のような文案であるとすれば、抑止力などもう存在しないと言っていいでしょう。北東アジアの安全保障環境を見た時、日本はアメリカに「こんなものは変な誤解を撒き散らすだけなので、絶対ダメだ」と言っておくべきです。多分、言っているとは思いますが。(おわり)
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