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2016-08-16 00:00
法治と中国本土、ロシアについて
真田 幸光
大学教員
現行の世界秩序の根幹には、「貨幣経済社会である」と言うことと共に、「法治社会である」ということがあると私は考えています。そもそも、法治社会の根幹となる法治国家とは、「その基本的性格が変更不可能である恒久的な法体系によって、その権力を拘束されている国家」と定義されています。これは、近代ドイツ法学に由来する概念であり、国家に於ける全ての決定や判断は、国家が定めた法律に基づいて行うとされており、この国家を理想とする思想を法治主義と呼んでいるのであります。
社会に於ける階級が激しく対立していた当時のドイツにおいて、法律に従った、法律による、国家の統治を実現することによって、国家内部における客観的な法規の定律及び行政活動の非党派性を保障して階級対立を緩和し、臣民の権利ないし自由を保障する実質的な内容を有していましたが、その後、形式的で法技術的な原理に転化し、最終的に定着した概念とされます。
こうした中、法による支配を、「そもそもその基となる“法”そのものが悪法である。現実にそぐわない」とする視点を前面に押し出しつつ、「ロシアはウクライナ問題に関する国際法での秩序に反発し、中国本土は南シナ海問題に関するハーグの仲裁裁判所の決定を認めようともしていない」といった事態が今、発生していると私は見ています。いずれも、「国際法」というものに「罰則」という大きな重しが掛かっていない、即ち、拘束力がないことからする事態と見られ、だからこそ、当事国は、こうした第三者の法的判断を自らには不利と看做すと最終的には受け入れないとする事態が起こる可能性が出るのであります。即ち、「Legal Obligation」そのものが弱いので、法的拘束力の弱さを背景に法的判断が事実上意味を持たなくなるのであります。こうした中、その法的判断に意味を持たせようとすれば、法的罰則はなくとも、「法の秩序、裁定を守らぬものは社会から退出をせよ」といった、「Moral Obligation」が強まらぬ限りは、効果を示しにくいものであります。
中国本土やロシアはそれを知ってか、自らの経済力や外交的影響力を巧みに使いながら、国際法体系の中での判断を、事実上、無視する動きに出ていると言えましょう。果たして、今後、世界が、特に法の秩序を重んじてきた欧州勢が、中露両国に対して道義的な責任を求めていくのかどうかが注目され、その間は中露共に、これを無視し続けるものと思います。尚、ロシアのスポーツ選手のドーピング問題に関しては、領土問題と比較した場合のことの重要性の相対的な低さと国際社会の道義的責任追及力が強いことから、ロシアの一部譲歩の可能性は示唆されている点は参考として、眺めておきたいと思います。法の支配の限界を感じる中、法の威信を改めて示してもらいたいと私は期待しています。
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