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2016-08-02 00:00
BREXITと今後の貿易交渉
緒方林太郎
衆議院議員(民進党)
BREXITの結果、貿易の分野で何が生じるかをかなり雑に考えてみます。簡単に言うと「TPP交渉の逆」をやると思っていただければいいです。まず、EUは貿易の世界では「関税同盟」と呼ばれます。関税その他の制限的通商規則を実質的にすべて撤廃する事、域外に対して共通の関税及び通商規則を適用する事の2つが「関税同盟(EUが該当)」の要件です。我々が締結しているEPA、FTAは「自由貿易地域」と呼ばれ、上記の2つの内、前者だけが適用になります。大まかに纏めるとこうなります。「関税同盟(関税等の撤廃+域外共通関税)」「自由貿易地域(関税等の撤廃)」です。これを止めるということですから、イギリスは域外共通関税を止め、関税その他の制限的通商規則をEUと相互に回復することになります。この交渉をすることになるわけです。勿論、この交渉はギブ・アンド・テイクですから、イギリスがEU製品に対して関税を上げたら、EUは見返りを求めて、EUがイギリス製品に対する関税を上げます。
さて、ここまでなら簡単なのですが、ここに「域外共通関税の廃止」が入ってきます。そうすると、残るのはGATT・WTOの共通ルールである「最恵国待遇」です。何かというと、「特別扱い」無しですべての国を平等に扱いましょうということです。関税同盟である内は域内国(EUメンバー)に対して優遇が可能ですが、それが出来なくなりますので、今後、イギリスがEU製品に適用する関税は、日本製品に対しても同じでなくてはなりません。
例えば、EUにはこれまでの付き合いもあるから5%、日本には10%みたいな関税の課し方が出来なくなります。それは、逆も然りで、EUがイギリス製品に課す関税は日本製品にも同じでなくてはなりません。それを避ける方法がないわけではありません。例えば、ノルウェー、アイスランドがEUと単一市場を構成するために作っているEEA(欧州経済地域)のようなかたちであったり、(EEAに入らなかった)スイスとEUのように特別の協定を結ぶという手法もあります。ただ、EEAではノルウェーやアイスランドはEUにカネは払うし、単一市場に関するルールにも従わなくてはならない、だけど、単一市場のルール作りには関与できない、という事になっています。それが嫌だからBREXITだったわけですから、こんな条件でイギリスがEUと単一市場を作ろうとはしないでしょう。
では、スイスのように特別協定の方式がありますし、多分解決方法はこの辺りかなという気もします。ただ、EU側からすれば「おみやげ」は出さないでしょう。ここでイギリスに甘い顔をしたら、今後、BREXITが伝播しそうな他国にも「あの程度でお目こぼししてもらえるなら、うちも出ていこうよ。」という議論になるでしょうから、そこは厳格だと思います。イギリスがEUに対して相当の対価を出さない限り、事実上、「最恵国待遇」の世界まで戻されてしまうような気がします。結果として、それはイギリスの貿易構造にかなりのデメリットを与えるでしょう。内情はもっともっと複雑ですが、ベースの考え方はこういうことです。さて、ここを見据えて、日本はどう動くかです。イギリスとも単独のEPA交渉を開始するかどうか、あまり先んじるとEUとの関係を害しますので、ここはよく見なくてはなりません。
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