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2016-07-20 00:00
ヨーロッパを恐怖に陥れたトルコ
川上 高司
拓殖大学教授
7月15日、トルコのイスタンブールで軍事クーデターが発生し軍はトルコをコントロール下に置いたと発表した。この一報に最も動揺したのはヨーロッパであろう。イギリスのEU離脱の衝撃も収まらない中フランスでは再びテロが発生してさらに混迷を深めていた矢先、イスラム諸国やシリア難民とヨーロッパを隔てる最後の「壁」であるトルコが軍の統制下に入ればヨーロッパの今後はどうなるのか、EUの首脳のみならずアメリカの指導者たちもまさに恐怖のどん底に陥りかねない気分だったに違いない。直ちにトルコのエルドガン政権を支援する声明を発表したその速さに、彼らの恐怖がよく表れている。
オバマ大統領は、モスクワでロシアと協議中のケリー国務長官と電話で打ち合わせ、「トルコ政府を全面的に支持する」と声明を発表した。続いてロシアも懸念を表明、トルコ市民に外出を控えるよう呼びかけるあたりはさまざまな経験を積んできた国家ならではの気遣いである。イランのザリフ外相も「この地域で軍事クーデターは許容できない」とトルコの治安を懸念している。EU大統領に至っては「トルコはEUの盟友である」とまで言い切り、民主主義政権の維持を支持した。多くの国家がトルコの現政権を擁護する声明を発表した。
今回のクーデターでは、エルドガン大統領を支持する一般市民が街に繰り出してクーデターに抵抗するという展開となった。エルドガン大統領自身もすぐにイスタンブールに移動して支持者に囲まれてクーデターの失敗を宣言した。クーデターに荷担した軍人たちのうち104人が殺害され、2,800人を越える兵士が逮捕されて収束した。
今回のクーデターは失敗したものの、軍がエルドガン政権に不満をかなり持っているという事実ははっきりした。エルドガン政権のどの部分に不満があるのかが問題の本質である。トルコはイスラム国家として欧米の民主主義を積極的に取り入れ宗教色の薄い世俗的社会を目指してきた。最近のエルドガン大統領はむしろその逆で強権的な政治を断行している。今回のクーデターをきっかけにエルドガン政権がますます強権的になる可能性が高い。なにしろ今回のクーデターでは現政権は軒並み欧米諸国からの支持を取り付けているのである。トルコは中東情勢とヨーロッパ情勢の双方を揺さぶる火種となりそうである。
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