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2016-07-20 00:00
(連載2)EU崩壊と新たな欧州自由貿易連合の可能性
児玉 克哉
社会貢献推進機構理事長
EUは壮大な実験である。「国家」という国際社会の基本単位をまとめて、政治、経済、外交、社会など全ての面において「統合」へと向かわせる。しかし、最も否定的な反応があったのが「ヒトの移動」であった。特に難民・移民を受け入れ、彼らが自由に域内を動くことができることに、反発が起きた。一方で「国家」という単位を残しながら、様々な分野で統合を行うことは、大きなストレスを生んだことは確かだ。
EUの中核国のさらなる離脱が2~3起きれば、EUの挑戦をさらに進めることは難しくなるだろう。関税の廃止や自由貿易という経済面に集約した新たな枠組みに「戻る」可能性がある。イギリスの反EU派も、反対の矛先は移民・難民の受け入れである。組織が大きくなり、官僚制度が効率を阻むということもあるかも知れない。つまり自由貿易には賛成なのだ。イギリスのEU残留派も主張の中心は経済的打撃だった。これは他の中核国にも言えること。
現在のEU制度が機能しなくなったら、より緩やかな自由貿易の枠組みとして作り直すしかなくなる。これはイギリスにとっては今から展望する最善のシナリオだ。このシナリオが浮上すれば、さらにEU内の反EUグループが活性化するかも知れない。これが早期にできれば、企業がイギリスからEU内に本社を移動させる必要がない。というか、その意味がなくなる。イギリスにとっては生き残りをかけた最後のシナリオだ。
EUの理念は素晴らしい。しかし展開が早すぎたのかもしれない。特に域内統合だけでなく、域外からの人の流入が多くなったことに、感情(emotion)がついて行かなかった。よく、今回のイギリスのEU離脱問題を二つのE、つまり経済(economy)と感情(emotion)とで説明される。とするなら、経済(economy)中心の新たな枠組みを作り直すしかないのである。実際にヨーロッパで感じたことは、本音と建前の分離だ。特に移民問題ではそれを強く感じた。建前が全面にでる公的な会議では難民を受け入れ、差別なき社会の創造を議論するが、本音ではそれに強く反対する。この分離が大きくなれば、やはり社会は歪みを持ってしまう。ヨーロッパは当面は現実的な選択をしなければならないのかもしれない。(おわり)
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