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2016-07-08 00:00
(連載2)今般の英国国民投票に思う
真田 幸光
大学教員
従って、次に英国で見られる現象は、「大英帝国の覇権復権」に向けた動きでありましょうが、ここにはいくつかの懸念があり、そうした懸念が既に顕在化しつつもあります。即ち、「大英帝国自身の揺らぎ」です。グレートブリテン島にある、長年、イングランドやウェールズに対する特別な思いを持つスコットランドが、これを契機に一気に「United Kingdom=UK」からの離脱を改めてトライ、そしてその場合には、スコットランドはEUに加盟し、更に、大英帝国の資源の一つである「北海油田」の利権をも虎視眈々と狙い始めている。
同じく、大英帝国には特別な思いを持つ中国本土が、これを契機に、相対的には力が弱まる英国に対するアプローチを強め、一気にその英国に対する影響力を強める、或いは、全くその逆に、ここで一気に積年の恨みを晴らすが如く、英国包囲網を強め、英国叩きに出るといったことが予想され、現段階では、そのいずれの方向で、中国本土が今回の事態を「Take Chance」して動いてくるのか、予想が難しい。更に、ロシアも中国本土と同様に、場合によっては、中露が手を組みながら、英国に対するこうした動きを示してくる可能性もある。英国を含めて53カ国を数える英国連邦に対する動揺は大きく、英国が自らの「威信=Dignity」を担保する、世界に抱える英国連邦の資産を維持できないかもしれないと言う不安が、現段階では拡散しつつある、といったことが上げられます。
大英帝国にとっては、少なくとも、「こうした苦難を乗り越えていく気概」を見せ、世界に対する、「威厳の誇示」を示すことが出来ないとすれば、英国民の今回のEU離脱の判断は、「英国の目先の利益を守ることにはなるかもしれないが、大英帝国が長年築き上げてきた世界に於ける覇権国家としての威厳は一気に崩壊し、英国も小市民が支配する単なる一国となるかもしれない。」ということを私はイメージします。その上で、私は思います。正確に申し上げますと、「英国びいきである真田幸光の思い」を込めてイメージしますと、「やせてもかれても英国は英国であり、覇権国家の雄として存続する。賢い英国民は上述したことをはじめとする苦難を克服し、雨降って地固まるが如く、再び、世界に於ける大英帝国の威厳を取り戻し、世界の覇権を握り続ける。」と期待感を込めて予想しておきたいと思います。
しかしながら、日本という国家としては、ここは慎重に大局を眺め、上述したような、「英国民自身の気概」を確認、その気概が強いものであるとすれば、ここで一気に他国(特に中国本土)に先を越されぬように、英国とは、「新日英同盟」を締結して、より良い世界秩序を構築する一員として日本も活躍するチャンスを探ればよいのではないかと私は考えています。その為にも、日本としては、本源的に見た日本のあり方を私たち日本国民もしっかりと議論すべき時期に来ているのではないかと思います。即ち、英国の覇権が守られようが、新たな秩序がうまれようが、そうしたことには関係なく、日本は世界から必要とされ、尊敬されていく国家を目指していくべきではないかと私は考えています。但し、その場合には、今回、キャメロン首相が取ったような手段ではなく、「議会制民主主義」の良さを生かして、「先ずは、議会でしっかりと、徹底して議論をした上で、その議論した内容に関して、信を国民に問う」と言う形での国民投票が日本にとっては重要になるのではないかと私は考えています。それにしても、少なくとも、当面は混沌が深まりそうです。そして、こうした時期に、テロ活動はもとより、世界に紛争の火種が拡散しないように祈るばかりであります。(おわり)
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