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2016-06-28 00:00
中国の“国際法西欧押付論”への反論
倉西 雅子
政治学者
フィリピンが仲裁裁判所に提訴した南シナ海問題は、同裁判所による裁定の日が近づくにつれ、中国の行動もエスカレートしてきているようです。先日も、フィリピンに対して、遂に表立って仲裁裁判の停止を要求したとも報じられています。
国際法に対しては、中国は、しばしば“国際法とは、西欧が自らに都合の良いルールを他の地域に押し付けてきたものに過ぎず、普遍性はない(従う必要はない…)”とする立場を示してきました。この中国の言い分は、国際法の本質を言い当てているのでしょうか。近代国際法とは、ヨーロッパを発祥の地として全世界に広がったことは確かであり、西欧起源説については、間違っているわけではありません。
しかしながら、何故、国際法が発展したか、というその理由を探りますと、そこには、共通のルールの下で自らの行動を律することで、力のみが支配する野蛮な世界からの脱出を目指す人類の努力が見出されます。共通ルールが無ければ、数限りない紛争が発生し、戦場では非人道的な残虐な行為もまかり通ります。そこで、できる限り争い事を低減させ、人道に反する行為をなくすために、慣習国際法を含め、国際ルール造りが始まるのです。例えば、ロシア帝国の提案により1866年に署名された「サンクト・ペテルブルク宣言」は、非人道的な兵器の制限を目的としていますが、その前文には、「文明の進歩は、戦争の惨禍をできる限り軽減する効果をもたらさなければならないこと」と記されています。近現代とは、二度の世界大戦をはじめ、全世界の多くの人々が、絶え間ない戦争に苦しめられた時代であったからこそ、誰もが国際法の必要性を痛切に感じた時代でもあったのです。
中国は、国際法が誕生した理由、並びに、何故、法の前の平等の原則の下で全ての諸国がルールを順守すべきなのか、考えてみるべきです。国際法は、決して西欧諸国が自らが有利となるために制定したものではなく、互いに相争った西欧諸国の間で誕生した事実にこそ注目すべきなのです。国際法が人類の文明の証であるとしますと、その否定は、野蛮を意味するのですから。
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