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2016-06-26 00:00
(連載1)貝原益軒と日本の経済学
池尾 愛子
早稲田大学教授
15年ぶりに、「女性の経済学・経済思想の歴史」の国際プロジェクトが動いている。1990年代半ばに、山川菊栄(1890-1980)、三瓶孝子(1903-1978)、谷野せつ(1903生)についての項目を書き、『女性エコノミストの伝記的辞典』(A Biographical Dictionary of Women Economists、2001年)に収録された。英語の「economist」には大学所属の経済学者も非教育機関の経済専門職(エコノミスト)も含まれる。前回、松平友子(1894ー1969)には気づいていたものの、最寄り図書館で彼女の書物が入手できず、手つかずになっていた。今年3月、お茶の水女子大学図書館に通って、彼女の仕事のほとんどに目を通すことができた。『日本における女性と経済学―1910年代の黎明期から現代まで』(北海道大学出版会、2016年3月)の出版も追い風になっている。
今回のプロジェクトは約1年前に開始されている。日本のケースを書く人がいなかったようで、今年の初めにプロジェクトに飛び込むことになった。「女性経済学」だけを研究したり学会発表したりするのは歓迎されないのは、20年前も今も変わらないようである。それゆえ、「女性経済学」プロジェクトに関わると必ずオーバーワークになる。それでも関わるのは、予想される事実が確認されたり、色々と興味深い事柄が「発見」されたりするからである。多くの女性研究者たちが関わるので、お互いに励みにもなる。
前回はヨーロッパ、北米、ロシアに、日本のエコノミストたちの項目が加わる形になった。今回はさらに、インド、アラブの女性の経済学・経済思想が加わり、学術世界でのグローバル化は着実に進展していて、こちらでは後戻りはないと思われる。今回のプロジェクトでは、「少なくとも1770年代以降をカバーする」、「1950年以前に生まれた女性を対象とする」ことになっている。編者と相談した結果、日本のケースでは家政学や「良妻賢母」を入れることになったので、先週北米の関連学会が開催されたおり、伝統的「家」観念を含めて丁寧に報告した。
欧米の「home economics」では個人(individual)に重心があるのに対して、日本の家政学や家事・家計経済学等では個人より「家」に重心がある点は大きな相違である。日本の場合、「home economics」ではなく、「household economics」を使えば混乱は避けられそうである。欧米の「home economics」も日本の家政学も19世紀後半から展開し始め、1920-30年代には「予算内での生活」のほか、「家庭生活の合理化」「女性の余暇時間の最大化」等が課題になっていたようだ。それゆえ、「良妻賢母」の理念は「合理的で進歩的な消費者」のイメージにつながるようにみえる。(つづく)
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