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2016-05-20 00:00
(連載2)核保有国の“ノブレス・オブリージュ”なきNPT体制は存続するのか?
倉西 雅子
政治学者
二つ目のNPTのメカニズムは、核保有国、あるいは、国際社会に、NPT条約違反といういわば“刑法違反者”を取り締まる警察的機能を許す機能です。この機能は、NPTに反して核を保有した国に対して、それを犯罪行為として咎め、排除するために働きます。実のところ、大量破壊兵器が発見されなかったため、失敗との評価を受けているイラク戦争は、核放棄の警察力として軍事力が行使された唯一の事例でした。その一方で、厳しい経済制裁と交渉により核開発を一先ず放棄させた事例が、今般のイランとの核合意です。
しかしながら、この手法にも大国のダブルスタンダードが見られ、インドやパキスタンのみならず、イスラエルも核を保有していることは公然の秘密です。本来、警察は、法の前の平等を貫徹しなければならないにも拘わらず…。
また、北朝鮮のように、合意も法も無視し、中国やロシアといった勢力を背景に核保有に邁進する国が存在する場合には、筋を通すならば、イラクと同様に武力で核廃棄を強制するしかありません。そして、このケースでも、核保有国には、警察力の行使として戦争を引き受ける覚悟が求められるのです。
以上に、NPT体制のメカニズムとその問題点について見てみましたが、何れにしても、この体制が、いかに、不備と矛盾に満ちているかが分かります。少なくとも、NPT体制では、核保有を認められている分、核保有国に重い責任と自己犠牲の受け入れ、“ノブレス・オブリージュ”がありませんと、全ての諸国の安全は保障されず、国際社会の平和は成り立たないのです。仮に、核保有国が、この責任と自己犠牲の荷を下ろしたい、というのであるならば、NPT体制自体の抜本的な見直しを要するとする意見は、議論に値しない非合理的な暴論とは言えないのではないかと思うのです。(おわり)
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