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2016-05-19 00:00
(連載1)核保有国の“ノブレス・オブリージュ”なきNPT体制は存続するのか?
倉西 雅子
政治学者
NPT体制については、いわゆる“平和主義”の名の下で推進されてきた核廃絶運動に隠れて、その欠陥については見過ごされがちでした。しかしながら、北朝鮮が核・ミサイル開発を急ぐ中、今一度、この欠陥について、国際社会は確認しておく必要がありそうです。
NPT体制の真の目的は、原発の輸出拡大を目指していた米ソが、輸出先、特に日独の核保有を怖れたが故の利害の一致との見方があります。おそらく、この指摘は、NPT体制構築の動機の一面を説明しているのでしょう。しかしながら、その反面、冷戦を背景とした軍事的緊張から発する核保有国の拡大問題も懸念されており、少なくとも表向きは、後者がNPT体制を正当化したのです。NPT体制とは、その誕生の時から大国の利害が複雑に絡んでいるのですが、その複雑性は、NPTの仕組みそのものにも反映されています。いささか単純化し過ぎるものの、NPTは、二つのメカニズムによって成立しています。
その一つは、核保有国間の均衡抑制です。条約には明文の規定がないものの、当条約では、1967年1月1日以前に核を開発した国に限定して核保有を認めたとされています。実質的には、米ソをはじめとした国連安保理常任理事国ですが、その後、インドとパキスタンは、NPT体制を無視して相互に核の均衡を実現してしまいました。そして、この大国間の均衡抑制は、相互確証破壊に至るまで、大国による核の開発と増強を許し、米ソ間の核削減合意後も中国が積極的な増産に乗り出したため、全体としての核弾頭数は一向に減る気配が見えません。なお、仮に、現非核国の全てが未来永劫に核放棄を約しても、均衡抑制の面から、現核保有国も、核を廃棄するのかどうかは、同条約では不明です。
核保有国の非核同盟国は、“核の傘”を差してもらうことで、この大国間の均衡抑制の恩恵に与ることができます。しかしながら、“核の傘”は、必ずしも常に有効なわけではありません。特に、核保有国が、その同盟国である非核国が、その対立陣営側の核保有国による核の脅威に晒された場合、非核同盟国のために自国が核戦争に巻き込まれるリスクを引き受けなければならないからです。中国、あるいは、ロシアが、北朝鮮に“核の傘”を約束しているようには見えず、暗黙裡に核拡散を放置した理由は、案外、北朝鮮の暴走によって自国が核攻撃を受ける事態を避ける為とも考えられます。また、核保有国と同盟関係にない国は、非核地帯であっても、“核の傘”はありませんので、最悪の場合には、土砂降りの“核の雨”に見舞われる可能性があります。(つづく)
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