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2016-05-11 00:00
「質問力」について思う
緒方林太郎
衆議院議員(民進党)
TPPの特別委員会で明らかになった事の中で、秀逸だったと思うのは4月19日の質疑でした。普通に聞いていると「ああ、そうなのか」と思われるでしょうが、実は玉木雄一郎議員の「質問力」がとても光った質疑だったのです。聞き方がとても良かったのです。解説すると、聖域5品目(コメ、麦、指定乳製品、牛肉・豚肉、甘味作物)というのは、実務上、関税分類で行くと594品目あります。例えば、牛肉ですと冷凍、冷蔵の分類や、枝肉、部分肉の分類等でかなりの品目があります。なので、聖域5品目といっても、実際には数がとても大きくなります。その一つ一つを「タリフライン」と言います。
これがどのようにTPPで変わるのかということですが、まず、「タリフラインで変更されたものは?」と聞くと、変更されていないタリフラインはたくさんあります。コメであれば、大多数のタリフラインは変更がありません。単に新しいアメリカ枠、豪州枠のタリフラインが追加、変更されただけです。それ以外の従来の輸入制度については何も変わりません。これですと答弁は「◯◯品目については変更がない」という感じになります。では、「守り切れたか」と質問するとしましょう。これは争いのある所ですが、既存の答弁では「関税割当や国家貿易等のツールを設けた。関税撤廃期間も長く取った。しっかり守り切った。」という理屈になります。こういう質問だと、交渉結果の実態がよく見えないのです。
そんな中、玉木議員の質問で最も秀逸だったのは「『無傷』だったものはあるか?」というフレーズです。「無傷」という言葉の定義はなかなか難しいですけども、かといって答えないわけにもいきません。「無傷という言葉の意味が不明なのでお答えできない。」という答弁では、さすがに国会審議がもたないからです。答弁を書く側に自分を置いてみると、これ程嫌な質問はありません。コメの既存の制度はいじっていませんが、それにプラスαで新枠による輸入を行う以上、既存の制度にも影響なしとしないからです。その他の品目でも影響無し(無傷)と言えるものはまずありません。19日午前中の審議で本件で議事が止まった後、午後の再開後では、仕方なく、森山大臣は「無傷なものはない」と言わざるを得ませんでした。
ちょっとした小技の世界ですが、同じ質問をしているつもりであっても、用語をうまく使わないとスルッと逃げられてしまいます。隔靴掻痒の状態になります。逆に上手くやれば衝撃的な答弁が返ってくるということです。私も試行錯誤していますが、同じ現象に対してどう問いを投げ掛けるかというのが「質問力」に繋がるケースはとても多いです。こういう所で、我々は皆、頭を捻りながらやっているわけです。
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