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2007-02-26 00:00
イランの底力の過小評価は危険
西川 恵
ジャーナリスト
核開発をめぐるイランと国際社会の対立が先鋭化している。米国は「悪の枢軸」としてイランと北朝鮮を同列に扱っているが、イランの問題への対応能力、社会の底力などを軽んじるべきではない。筆者はイラン革命直後に約2年間、テヘラン特派員をし、それ以降、国際政治の脈絡の中でイランをフォローしてきた。国土の広さ、人口、石油資源といった所与の条件を横に置き、イラクや湾岸王政国家など他のアラブ諸国と比べた時、イランの内在的ダイナミズムは群を抜いている。これを支えている要件を3つ挙げてみる。
第1は人的資源の豊富さと、そのレベルの高さだ。革命直後、イランは反体制派のテロで多くの指導者が倒れたが、その度に、代替する指導者が現れた。フセイン大統領という重石がなくなると混乱状況に陥ったイラクと対照的だ。第2は自己変革する力である。イラン革命は広範な大衆抗議行動の帰結であり、他のアラブ諸国の体制転換の契機が、クーデターか宮廷革命だったのと大きな違いだ。イランが国教とするイスラム教シーア派は、スンニ派と異なりコーラン解釈の自由を認めており、これが多様な政治思想をはぐくみ、大衆運動に土壌を提供している。第3は機を見るに敏なプラグマティズムで、イラクのフセイン大統領のように目算のないまま米国と衝突するのは考えられない。
部族社会のアラブ世界が、近年まで国家・国民意識をもてなかったのに対して、イランはペルシア文明を共有する民族的一体性を保持し、歴史的に地域パワーとして周辺諸国を圧倒してきた。革命後の20余年、対イラク戦争、戦後復興に力を殺がれ、影響力を周辺に投射していく余裕はなかったが、これは例外的な時期だった。いま本来のあるべき姿を再び取り戻しているともいえる。
アフマディネジャド大統領の対米挑発姿勢には国内では批判も強く、イランは一枚岩の強硬路線ではない。硬直的な金正日の独裁体制の北朝鮮と比べても、イランは遥かに柔軟性をもっており、現実派を懐柔しつつ、強硬派を孤立させる粘り強いアプローチが必要だ。
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