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2016-04-19 00:00
日本も「自衛的核保有」の検討を
加藤 成一
元弁護士
アメリカ大統領候補トランプ氏の「核武装容認」発言を契機に、日本では、永年「タブー」とされてきた核武装の是非が論議されつつあるようである。中国、北朝鮮による脅威を考えれば、日本の安全保障の観点からは、論議は必要であろう。
日本では、現在も「核武装反対論」が圧倒的に多いようである。その主な論拠としては、(1)唯一の被爆国の立場との整合性(2)核武装は国の自立の条件ではない(3)核武装により日米同盟が悪化または崩壊する(4)国土が狭く核武装に適さない(5)核拡散防止条約(NPT)体制に逆行し孤立化する(6)アメリカの「核の傘」で守られているから必要性がない(7)核武装は憲法9条に違反する、などであろう。
しかし、いずれも根拠薄弱な主張である。(1)の「被爆国」の点については、国家存亡の観点からすれば、日本の「唯一の被爆国」としての存在価値よりも、日本国の存立価値の方が、はるかに重大であり、どちらを優先すべきかは明白であろう。(2)の「国の自立」の点については、日本の「自衛的核保有」が国の自立の絶対的条件ではないとしても、自立にプラスであることは否定できないであろう。このことは、「核武装」した北朝鮮と中国との関係の変化が示唆的であり、(3)の「日米同盟」の点については、アメリカ政府の容認による「自衛的核保有」は、日米同盟の悪化をもたらさないであろう。かえって、「自衛的核保有」をした日本とアメリカとの集団的自衛権の行使も可能となる。(4)の「狭い国土」の点については、日本より国土が狭いイギリスや、やや広いフランスの核戦力が「核抑止力」として有効に機能している事実からしても、反対の論拠にはならないであろう。(5)の「NPT体制」の点については、NPT体制を主導するアメリカ政府の容認による「自衛的核保有」であれば、日本が孤立化することはなく、さらに、日本の国家としての存亡は、NPT体制にも優先するであろう。(6)の「核の傘」の点については、「核の傘」が必ずしも有効確実でないことは、かねてより日米の識者らが指摘しているところである。(7)の「憲法9条」の点については、自衛のための必要最小限の「核保有」が、憲法9条に違反しないことは、日本政府の確定した憲法解釈である。
以上の検討により、日本では圧倒的な「核武装反対論」の論拠が、必ずしも絶対的説得的ではないことが明らかであろう。アメリカ政府が容認すれば、日本は日本の安全保障のために「自衛的核保有」の得失を検討すべきであろう。
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