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2016-04-19 00:00
トランプ発言が問う第二次世界大戦の意義
倉西 雅子
政治学者
アメリカ大統領選挙の結果次第では、半世紀以上に亘って戦後の安全保障を支えてきた日米同盟体制の見直しをも迫られる展開となりそうです。そして、トランプ大統領の誕生が戦後レジームの転機となると予測されるのは、仮に氏の発言が文字通りに政策化されますと、第二次世界大戦の結果がもたらした国際体制が根底から覆されるからです。
1941年8月14日、大西洋の洋上で米英首脳によって発された英米共同宣言は、「大西洋宣言」の名でも知られておりますが、この宣言は、先の大戦に連合国側が勝利した場合の戦後構想を明らかにしたものです。そして、東西冷戦の発生に直面しつつも、戦後の国際秩序は、凡そこの宣言通りに構築され、曲がりなりにも今日に至っております。
同宣言は、1.領土不拡大方針、2.国民の自由な表明に基づく領土変更、3.民主的政体の選択、4.自由貿易主義、5.国際経済協力、6.全人類的平和の確立、7.航行の自由の実現、8.恒久的な一般的安全保障の制度の確立の8つの基本方針から構成されます。これらの高邁な理想は連合国諸国の共通目的となり、いわば、連合国側で共有された世界大戦の大義とされたのです。ところが、仮に、トランプ大統領が、中国の米中二分論を認める形でアジアから米軍を撤退させるとしますと、大西洋宣言の方針は、全て消え去ります。中国が、相手国を無視して領土を拡張し、共産主義体制を押し付け、“中華経済圏”としてアジア市場を囲い込み、朝貢を復活させ、周辺諸国を軍事力で脅し、航行の自由を阻害し、そして、国連をも崩壊させかねないのですから。第二次世界大戦において両陣営が払った甚大なる犠牲を考えますと、戦後の国際体制の崩壊は、その犠牲を無にするかもしれません。日本国の東條首相も、1943年11月6日に発表された「大東亜共同宣言」を作成するに際して「大西洋憲章」を参考にしたとされるぐらいですから、偽善的プロパガンダとの批判がありつつも、同憲章には、敵陣営も認めざるを得ない人類普遍の理想が込められていたとも考えられます。
枢軸国側の諸国がすんなりと戦後の国際社会に復帰し得たのも、連合国側が掲げた価値に異議がなかったからかもしれません。むしろ戦後は、東側陣営を形成した共産主義諸国の方が、価値観において「大西洋憲章」の方針と鋭く対立しました。しかしながら、遂に今日、その“西側陣営”の盟主であったアメリカまでもがこれを放棄し、力の支配を容認してしまうとなりますと、一体、何のために第二次世界大戦は戦われたか、頭を抱えざるを得なくなるのです。
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