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2016-04-08 00:00
中国は国連海洋法条約から脱退できるのか?
倉西 雅子
政治学者
南シナ海での領有権争いをめぐり、近々、フィリピンの提訴に基づいて仲裁裁判所の決定が示される予定です。中国が主張する九段線は否定される公算が高いのですが、領有権主張の法的根拠を失う中国は、事実上の“敗訴”に対して如何なる行動をとるのでしょうか。
国際海洋司法センターの設立もその一つなのでしょうが、中国が、正式に国連海洋法条約から脱退する可能性も否定はできません。しかしながら、条約脱退を選択したとしても、中国には、茨の道が待っています。
第1に、当条約から脱退すれば、当条約が締約国に対して保障している排他的経済水域等(EEZ)の権利を、中国は、もはや主張することが出来なくなります。中国は、同条約の前身とも言えるジュネーブ海洋法条約の締約国でもありませんので、領海や大陸棚を含む海洋に関する権利主張の根拠の一切を失う可能性がないとは言えません。当然、南シナ海につきましても、その領海どころか排他的経済水域の権利も主張できなくなります。第2に、条約脱退による権利喪失を回避するために、仮に中国が、慣習国際法を盾として領海や大陸棚等の権利を主張したしても、今度は、自国が慣習国際法の適用を受けることを自らが認める結果を招きます。つまり、国連海洋法条約を排除して慣習国際法を適用を試みたとしても、中国の九段線が正当化される見込みはないのです。第3に、条約や国際機構からの脱退によって、国際法秩序から離脱することができないことは、実のところ、第二次世界大戦の歴史が示しております。枢軸国であった日本国とドイツは、相次いで国際聯盟を脱退しましたが、敗戦後、勝者の裁きであれ、国際軍事法廷が設置されています。
以上の諸点を考慮しますと、中国は、国連海洋法条約、否、国際法秩序から離脱することはできないのではないでしょうか。中国は、国際社会の良き一員であることを望むならば、仲裁裁判所の決定に素直に従うべきではないかと思うのです。
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