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2016-03-31 00:00
(連載2)新自由主義の廃棄に進む世界
田村 秀男
ジャーナリスト
首相周辺は増税延期論のアドバルーンを打ち上げ、再延期やむなしの世論誘導を試みていることからすれば、安倍首相が時機を選んで再延期を宣言する可能性は十分あるだろう。だが、危惧するのは、財政をいかに成長に結びつけるか、というまっとうな成長戦略の欠如だ。ただ単に、世界の景気情勢がおかしいから再増税をさらに延期するというだけなら、緊縮財政付きで決めた2014年秋の消費税率10%の17年4月への先送り時期を、さらに後にずらすだけの意味しか持たない。緊縮財政路線を放棄し、動かない巨額の余剰貯蓄を実需拡大につなげる政府の明確な意思がないことには、慢性デフレに慣れきった消費者や企業が動き出すはずはない。
学者・エコノミスト、メディアの主流派たちも、G20の財政・金融両輪合意をまるでよそ事のように受け取っている。20年もの慢性デフレの期間、一貫して財務官僚に追随し、増税と歳出削減ばかりを説いてきた彼らの脳内には「緊縮」の二文字しかないようだ。その旗頭の日経新聞は上記のエコノミスト誌の論説を全文翻訳、掲載(2月23日付朝刊)したのは評価するが、時流から大きく外れた自身の硬直的な緊縮財政主義、市場原理主義の主張を省みるつもりがあるだろうか。
緊縮財政と金融緩和の組み合わせは、実体経済を破壊する。日銀は年間80兆円の資金を創出し、金融機関に流し込むが、カネは消費と実物投資に回らないから所得は増えない。内需が絶望的なら企業は利益をため込む。
貸出需要がないとみなす銀行大手はもっぱら対外融資に向かう。1日発表の財務省法人企業統計によれば、金融業を除く全産業の利益剰余金の増加基調は再加速し、15年末に前年比25兆円増の349兆円に達した。賃上げと実物投資の原資はたっぷりだ。しかし、その意欲を削いでいるのは内需を冷やす緊縮財政政策にある。安倍首相が賃上げを企業に求めるのは結構だが、政府が至極まともな財政政策に回帰しないと、結果は1年前と同様、「言ってみました」だけのパフォーマンスに終わるだろう。(おわり)
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