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2016-03-28 00:00
不安な国連事務総長選
倉西 雅子
政治学者
次期国連事務総長選を控え、6人の候補者の顔ぶれが揃ったそうです。何れの候補者も東欧出身者とのことですが、この現象は偶然なのでしょうか。
国連発足以来、これまで東欧諸国出身の事務総長は一人もおらず、6人全員が東欧諸国の候補者であることは、この理由によって説明されています。国連が普遍的な組織である以上、トップの職もまた、全世界の国と地域に遍く開かれていることを示したかったのかもしれません。しかしながら、国連の役割を考慮しますと、この方針には疑問点もあります。地域的な配慮は、東欧諸国が旧社会・共産主義国であった歴史を考慮しますと、国連そのものに偏向をもたらすリスクがあります。
昨年も、ユネスコでは、ブルガリア出身の事務局長であるユリナ・ボゴバ氏の中国寄りのスタンスが問題となり、世界記憶遺産の登録をめぐって中国との裏取引が指摘されました。現在、ポーランドでも、“プーチン化”とも指摘される強権政治の復活が懸念されております。全員が東欧諸国出身となりますと、社会・共産主義時代の腐敗体質が中国をバックに復活し、今日でさえ問題視されている組織的堕落がさらに悪化する可能性もあります。また、今日の中東欧諸国は、自由化、並びに、民主化されていますが、ボゴバ事務総長がモスクワ国際関係大学の出身であるように、年齢からしますと、他の候補者達も、社会・共産主義の教育を受けているものと推測されます。社会・共産主義体制はトップ・ダウン型の組織であるために、法の支配の原則に対する理解が低く、国際社会における法秩序を擁護する国連の役割を蔑にする可能性もあります。
全員が東欧出身者であることは、他に選択肢がないことを意味します。結局は、国連を舞台に東欧諸国の間で支持票獲得をめぐる熾烈な闘争が繰り広げられ、候補者の能力は二の次となることでしょう。こうしたポストをめぐる権力闘争も、社会・共産主義の特徴でもあります。全候補者が同一地域出身という事態は、国連の将来に暗い影を落としているように思えるのです。
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