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2016-03-23 00:00
(連載2)高浜原発運転差止め仮処分決定について
加藤 成一
元弁護士
そして、もしも、裁判所や裁判官において、原発に関する世界最先端の科学的、技術的、専門的知見に基づき、一層安全性を担保する有効かつ明確な「規制基準」を示すことができないとすれば、原子力規制委員会が求めた「新規制基準」及びその適合性の判断に特段の不合理な点がなければ、これを尊重すべきであろう。最高裁も「原子炉施設の安全性に関する審査及び判断は、極めて高度な最新の科学的専門技術的知見に基づいてなされるから、それらに看過し難い過誤、欠落や不合理な点がなければ、行政庁の判断を尊重すべきである」旨判示している。(四国電力伊方原発訴訟平成4年10月29日第一小法廷判決。民集46-7―1174)。
本件高浜原発3号機、4号機の再稼働については、関西電力は原子力規制委員会から、「新規性基準」に適合すると認められたのである。少なくとも、「新規性基準」に基づき、何等のトラブルもなく、現に順調に稼働中であった3号機の安全性については、安全性を損なう「看過し難い過誤、欠落や不合理な点」(上記最高裁判例)があったとまでは言えないであろう。そうだとすれば、この点において、順調に稼働中の3号機についてまで、運転差止めを認めた本件仮処分決定は、不当であると言うほかない。
第二の点について。本件の場合のような「仮の地位を定める仮処分」における「保全の必要性」は、今直ちに差止めをしなければ、「著しい損害又は急迫の危険」が生じる場合に限ってその必要性が認められる(民事保全法23条2項)。「仮の地位を定める仮処分」は債務者(本件の場合は関西電力)に重大な影響を与えるため、「保全の必要性」は慎重かつ厳格に判断すべきものとされている。本件高浜原発3号機、4号機については、今直ちに運転差止めをしなければ、新たな「原発事故」などが発生して住民に著しい損害が生じ、又はその危険が急迫しているとまでは言えないであろう。
なぜなら、上記の通り、少なくとも3号機は、「新規性基準」に基づき、何等のトラブルもなく順調に営業運転中であったからである。したがって、本件の場合は、あくまでも「抽象的危険性」に過ぎず、今直ちに運転差止めをしなければならないほどの急迫した「具体的危険性」があったとまでは言えないのである。そうだとすれば、この点においても、本件仮処分決定は不当であり、「仮処分の濫用」ひいては「司法権の濫用」とも言えよう。いずれにせよ、大津地裁による本件仮処分決定は、確定した最高裁判例にも違反する不当なものであり、必ずや、その誤りは上級審において是正されるであろう。(おわり)
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