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2016-03-14 00:00
(連載1)欧州財政危機の可能性について
真田 幸光
大学教員
2008年9月、世界では、サブプライムローン問題等によって痛んだ巨額の不良債権を抱えて倒産した投資銀行であるリーマンブラザーズの問題を背景にして、「世界的規模の信用収縮」の状態が発生、これによって、実体経済には、「ものを生産してもあまり売れない。」「サービスを提供しようとしてもサービスに対する需要が減退した。」といった状況が生まれ、「売上高の減少とそれに伴う雇用環境の悪化」といった事態が顕在化しました。
これを受けて、世界主要国各国政府は、金融世界の悪影響を実体経済に対して極力与えないようにすべく、「財政出動を伴う景気対策」を矢継ぎ早に発表、何とか景気大減速の危機を回避しましたが、自らの国庫に資金の不足していた国々は一斉に、「国債を発行する」と言った形でその景気対策の資金を調達しましたことから、財政赤字の拡大と言う負の副産物を生んでしまいました。
日本、米国、そして、欧州の主要国もその例外ではありませんでした。そして、その国債は、先ずは、自国内の資金使途を背景にして調達されることから、普通は、「自国通貨建て」で発行され、調達されて行くことが多いです。次いで、国際基軸通貨である、現行で言えば、「米ドル建て」と言うことになりますが、欧州では、ご高承の通り、「統一通貨・ユーロ」に加盟している国々が多いことから、これら各国ともに、「ユーロ建て国債」を主として発行しました。そして、そのユーロを主たる、「調達通貨、運用通貨」として活動する欧州の国際的な業務を拡大していた金融機関たちも、この、「欧州各国政府が発行するユーロ建て国債」を更なる、「資金運用手段」として捉え、「積極的な購入姿勢」を示し、この結果、「各国は資金調達が叶い、金融機関は更なる資金運用手段が増え」一旦は、共にメリットを享受出来たのであります。
そして、この際に見られた現象として、「欧州各国が発行したユーロ建て国債を運用玉として捉え、購入した金融機関」の中には、例えば、ドイツと比較するとリスクが高い、しかし、リスクが高いからこそ、利率も高い、ギリシャやポルトガル、スペイン、或いはイタリアの国債を、「これらの国々は欧州連合加盟国であり、かつ、共通通貨使用国でもあることから、直ぐには、そして簡単には破綻しない。」との、ある意味では「錯覚的な」前提の下、「その破綻を意識した信用リスクに比して、利回りの高い」これらの国々の国債をたくさん購入して、自らの、「資産ポートフォリオ」の中に組み入れたのでありました。(つづく)
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