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2016-03-04 00:00
ソロス氏におびえ、内に向かって吠える北京
田村 秀男
ジャーナリスト
北京による著名為替投機家、ジョージ・ソロス氏への非難が止まらない。発端はこうだ。1月21日、スイスでの世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席したソロス氏がテレビでのインタビューで「中国のハードランディングは不可避だ。実際に目にしていることだ」と言い、人民元や香港ドルの暴落を見越した空売りをほのめかせた(夕刊フジ)。これに対し、1月23日に国営の新華社が非難の烽火を上げると、党支配下にあるメディアが競い合うように批判の大合唱である。人民日報の海外版は「中国を空売りする者は必ず敗れる」と論評し、「ソロスは視力障害」(新華社)「でたらめ」(人民日報海外版)と罵倒。国家発展改革委員会トップが「中国経済ハードランディング論」をこきおろし、中国人民銀行の周小川総裁は「投機筋には(為替)市場のムードを主導させない」「中国は世界最大の外貨準備を保有している」「国境を越えた資本移動は正常の範囲内にあり、人民元の下落が長く続く基礎はない」と語った。
ここで、読者は不思議に思わないだろうか。ソロス氏のような海千山千の投機家で、しかも海外にいる外国人にとってみれば、まるで、何かに脅えた負け犬の遠吠えのようで、何の痛痒も感じないはずだ。策略にたけた党官僚なら、そのばからしさ加減はわかりそうなものだと。ソロス自身、弱点がある。人民元投機の足がかりを中国国内に持っているわけではない。海外で元投機を狙うと報じられているヘッジファンドも肝心の元という弾薬を仕込んでいるわけではない。為替投機というのは、投機対象の通貨建ての資産、例えば株や国債などの債券、あるいは銀行融資など資金提供のルートがなければ、事実上不可能だ。
国際金融市場の香港には元資金入手のルートはあるだろうが、香港当局は北京の命令で対抗策をとるだろう。現に、ソロス氏は1998年に香港ドル暴落をしかけたが、香港当局はソロス氏が空売りをもくろんだ株式を大幅につり上げて大打撃を与え、ソロス氏を惨敗、撤退させた。
そう、北京がだれに向かって吠えているか、答えははっきりしている。相手は習近平党総書記・国家主席にとっての獅子身中の虫である。事実、ソロス氏のもとに駆け寄ろうとする資金提供者は中国国有企業幹部や富裕層など、多くが中国人投資家である。これらの多くは、習政権の監視が及ばない江沢民元総書記グループの企業や既得権者たちだ。ファンドは資金規模が大きくなればなるほど、投機の威力を増す。外貨準備が巨額というが、加速する資本流出とともに雲散霧消する恐れがある。北京はとにかく、内に向かって吠え続けるしかないのだ。
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