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2016-02-26 00:00
アメリカンドリームと“1%問題”
倉西 雅子
政治学者
今年のアメリカ大統領選挙は殊の外波乱含みであり、共和党のトランプ氏優勢のみならず、民主党でも、本命とされたクリントン候補が、早、失速を見せています。ニューハンプシャー州の予備選挙では、バーニー・サンダース氏に大差を付けられて敗北しました。
若年層からの支持を得て1位となったサンダース氏は、筋金入りの社会主義者であり、その演説には、“チェンジ”どころか“革命”という言葉が飛び出してきます。一昔前ではあり得ないのですが、こうした現象が発生している背景には、アメリカ社会の変質を指摘することができます。アメリカでは、中間層が崩壊の危機に瀕しており、その漠然とした不安感が、“アメリカの富は1%の富裕層に集中している”と訴えるサンダース氏への支持を押し上げているのです。しかしながら、“1%問題”は、ある意味において、“アメリカンドリーム”の行き着く先であったのかもしれません。
何故ならば、貧困から身を起こした人でも、億万長者になれることが人生の夢であるならば、その夢を叶えられる人は極少数となるからです。アメリカンドリームとは、チャンスは全ての人々に開かれながら、多数が敗者となる宿命をも負っているのです。そして、今日では、その前提であったはずのチャンスの平等も、怪しくなりました。もはやフロンティアは消滅し、エスタブリッシュメントに属していない人々には、アメリカンドリームを追求することさえ難しくなっているのです。アメリカンドリームを失ったアメリカは、果たして、どこに向おうとしているのでしょうか。その行き先が社会・共産化であるとしますと、共産党員が、”富と権力を独占している”とサンダース氏が非難している、その“1%”となるソ連邦や中国の誤りを繰り返すことになります。
耳に心地よい理想に飛びつくよりも、むしろアメリカは、メイフラワー号の誓約や独立宣言に謳われた建国の精神を蘇らせるべきなのではないでしょうか。全ての人々の平等、自由、そして幸福の追求を目指し、より良き国造りを誓ったその不屈の精神を。
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