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2016-02-25 00:00
欧州財政危機について
真田 幸光
大学教員
様々な世界的混沌が深まる中、相対的に見ると、国際金融社会のギリシャ問題を発端とする欧州財政危機に対しての関心は、最近は薄まっていると思われます。しかし、このギリシャ問題を背景とした、欧州財政危機のリスクは未だに潜在的に存在しており、これが、「統一通貨・ユーロ」に対する不信感を生み、更に、欧州経済そのものに対する不安が顕在化しているとも思われます。更に、先進地域を中核とする欧州の経済不安は、「先進国地域全体の経済不安」をも連想させ、それを前提として、「未然の対応は不可欠である。」とまで言われていることから、混乱の最大当事者であるギリシャのモラルハザードを引き起こし、ギリシャ自らの改善に向けた明確なる対応姿勢がなかなか見られないといった状態にもなっていると言われています。また、「今の欧州の根源は、ギリシャ、ローマ文明である。従って、欧州統一を目標にして動き始めた統一通貨・ユーロに関しては、ギリシャは、欧州諸国に頼まれて入ってやったと言わんばかりの姿勢を示し、強気に出ている。」とも言われ、一部には、「ギリシャは、わがままをいい放題である。」とまで言われていました。
そして、こうしたことを受けてか、オーストリアのファイマン首相は昨年6月には、ギリシャは債務問題に関する債権団との合意に於いて、「ギリシャは5カ年計画を策定する必要がある。」と述べ、長期的な視野に立った対策が必要であるとコメントしました。即ち、ファイマン首相は、「目の前の債務危機を脱するための短期的な解決策を作成するのではなく、ギリシャは中期的な財政見通しを立てるべきである。」と主張した上で、「欧州委員会も想定しているような中期的な解決策のためには、ギリシャと集中的な協議をし、5年間を見通す計画を策定することが必要である。」との考え方を示したのでありました。
そもそも、ギリシャのこうした体たらくの直接的な背景は、(1)過度の年金制度の設定、即ち、「社会保障給付費」と「人件費」が利払い後歳出の7割を占めるような状態になっていて、これを放置したこと、(2)行き過ぎた財政出動を良しとする政権が、政権交代のたびに拡大を続けたこと、即ち、王政崩壊後、政権交代がある度に、公務員としての雇用を増やしてきたこと、その結果として、公共部門の労働人口の約4分の1に相当していること、(3) 脱税が横行し、財政基盤の充実を図りにくいこと、などが挙げられましようが、上述したようなモラルハザードの中で、ギリシャ自身が、その根本的原因を早期に、かつ、大胆に改善しようともしていないことから、ギリシャ問題を背景に、「欧州経済不安は長引きそうである。」と危惧されています。
今後も、引き続き、欧州財政問題には、高い関心を払わなければならないようです。動向をチェックしていきたいと思います。
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