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2016-02-22 00:00
北朝鮮体制崩壊で難民は大量発生するのか?
倉西 雅子
政治学者
北朝鮮が核・ミサイル開発によって国際社会の平和と安全を脅かしている現状は、誰もが否定し得ない事実です。にも拘らず、国連常任理事国でありながら、中国やロシアといった国境を接する諸国は、大量の難民流入を怖れてか、北朝鮮に対する制裁強化には二の足を踏んでおります。
制裁強化に消極的である理由には、難民の大量発生のリスクの他にも、表面化していない理由があるのかもしれませんが、仮に、北朝鮮が体制崩壊した場合、今日のシリア難民のように、大量の北朝鮮難民が周辺諸国に押し寄せるという事態は起きるのでしょうか。体制崩壊の時期や形態によって難民の規模や流出経路は異なるのでしょうが、北朝鮮の難民流出は、少なくともシリア程に深刻化しない可能性があります。
その理由は、第一に、韓国が、“難民”、否、北朝鮮国民の受け皿となるからです。北朝鮮の体制崩壊は、即、韓国との南北統一問題に転換します。東西ドイツの再統一に際しては、東ドイツから周辺諸国への大量の難民流出は起きませんでした。つまり、迅速な占領と行政機能の維持が実現すれば、北朝鮮国民の難民化を回避しつつ、早期に事態が収拾されるシナリオも想定されるのです。第二の理由は、シリア難民の発生要因が、多様な勢力が複雑に絡む内戦の泥沼化にあるとしますと、北朝鮮の体制崩壊過程にあっては、内戦リスクがそれ程高くないことです。軍部を含め、国民の多くは金正恩氏に対する不満を鬱積させており、外国勢力の介入がない限り、ルーマニア式の体制崩壊が起きるかもしれません。また、イスラム教徒のように、外部的な国際ネットワークも存在しておらず、目下、国民が独裁体制の下で孤立状態にあることも、難民化が抑制される要因となります。第三に、シリアでは、高額の手数料を受け取り、難民を国外に移送する密航事業者が暗躍しています。統制経済の下で国民が貧困状態にある北朝鮮の場合には、こうした違法ビジネスが成立する余地は殆どなく、国民は国内に留まらざるを得ない状況に置かれるものと推測されます。もっとも、北朝鮮の土地柄を考慮しますと、人身売買には警戒する必要はあるかもしれません。
北朝鮮に対する制裁については、国連安保理での議論の本格化を待たねばなりませんが、少なくとも、北朝鮮難民に対する懸念は、全常任理事国を含む国際的な合意の形成により、予め払拭することは不可能なことではありません。過去の歴史を見ましても、体制崩壊は必ずしも大量の難民を発生させていないからです。難民問題という“刺”を貫くことができれば、北朝鮮の体制崩壊も、現実味を帯びて行くことになるのではないでしょうか。
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