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2016-01-21 00:00
メルケル首相の誤算:コンセンサスなき移民・難民政策の混乱
倉西 雅子
政治学者
100万人を越える夥しい数のシリア難民を受け入れたドイツでは、昨年暮れに難民申請者が暴力沙汰を引き起こす一方で、難民を襲撃する難民受け入れ反対派のドイツ人も出現するようになりました。パリの同時多発テロもあり、ヨーロッパ諸国にとりましては、2016年は不安な年明けとなりました。
ところで、ドイツのメルケル首相は、シリアの一少年の痛ましい溺死を目の当たりにして、人道的な配慮から難民の受け入れを表明したのですが、一体、この決定のどこに誤算があったのでしょうか。メルケル首相に誤算があったとしますと、それは、シリア難民もドイツ国民も、双方ともが首相が思い描くほど模範的に行動するわけではないことに思い至らなかったことではないでしょうか。首相の頭の中では、シリア難民は、全て内戦によって故郷を追われた善良な老若男女であり、国民もまた、人道を最優先にする善良な老若男女であったのでしょう。
しかしながら、現実には、大晦日の事件が示すように、シリア難民の中には素行の悪い人々もおり、また、ISが既に宣言しているように、受け入れ国での活動を任務とするテロリストも混入しています。一方、ドイツ国民の中には、元より排外主義的な極右団体のみならず、大量の難民の流入に根を上げている、あるいは、ドイツのカオス化の危機を感じている一般の国民も少なくありません。NHKが報じた現地のルポルタージュでは、受け入れ支持派が反対派を“難民の受け入れに反対なら、お前こそ出ていけ”と口汚く罵る映像もあり、一つ間違えますと、国民世論は分断され、国民と難民との間の摩擦のみならず、国民同士が反目しあう状況となります。
国家内部の居住者が変化することは、社会全体の変化をも意味しますので、移民・難民問題に対して場当たり的な判断、あるいは、なし崩し的な移民の大量流入が発生しますと、混乱が長引き、文明や社会秩序の崩壊、そして解決困難な社会問題をもたらしかねないことは、人類史が語るところです。移民・難民政策については、リスクを予め排除すべく、反対・賛成両者に対して十分な意見表明と議論の機会を与え、時間をかけてでも、受け入れ条件、テロ・犯罪への対処措置、移民・難民の行動規範など、受け入れ側の国民、そして、移民・難民の側の双方のコンセンサスの形成を要するのではないかと思うのです。
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