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2007-02-13 00:00
世界情勢と日本の戦略
田島 高志
東洋英和女学院大学大学院客員教授
先日日本経済新聞社と米戦略国際問題研究所が共催したシンポジウムに出席した。その基調講演で米国のペリー元国防長官は、北朝鮮の核開発は遅らせることはできるが止めることは出来ない、もはや確実に核開発能力を防止する方法はないという深い穴に陥っている、と発言した。さらに同氏は、今回の6者協議の行方は不明であり、もし頓挫ないし失敗に終わる場合には、北朝鮮の行動は、核兵器の他国への移転、売却など世界の安全保障に深刻で危険なものになる可能性がある、その場合の日本の選択肢としては、先ず、ミサイル防衛システムの開発を進展させる、次に、米国とともに「拡大抑止戦略」をとる、つまり、日本に対する攻撃は米国に対する攻撃と見做すとう強力かつ明白な声明を日米両国が共同で発出することが考えられる、しかし、日本自身が核兵力を持つことは、周辺国に対し複雑な影響を与え、核競争を生むことになる危険があろう、との見解を述べた。
また、特別講演でブラックウイル前米大統領次席補佐官は、米国にとり現在の国際情勢は極めて深刻な情況にある、つまり、イスラム過激派の台頭で今後何年もテロの危険の下で生きなければならない、中東での米国に対する評価の低下、イラクでのシーア派とスンニ派の分裂、アフガンでのタリバンの台頭と麻薬輸出の増加、米ロ関係の不安定化、中国の将来は不確実性に満ちており現状維持型とは思えない、北朝鮮が核を離さず輸出と拡散の恐れが強い、欧州は内部の問題処理で手一杯であり外部の問題への貢献は期待できない、ラ米は左傾化が進んでいる、など暗い情勢に覆われている、当面ワシントンでは昼も夜もイラクのみが話題である、などの点を指摘した。
このような混沌とした世界情勢の中で、今後日本は如何なる長期的見通しと戦略を持ち、日常の政策を展開して行くべきか、真剣に検討すべきは当然である。特に、中国は、「中華民族の偉大な復興」を目標に掲げ、宇宙船の打ち上げ、人工衛星のミサイルによる打ち落し、日本近海への潜水艦の出没、尖閣諸島への海洋調査船の接近、などの例からも察知されるように、将来は科学技術的にも軍事技術的にも米国に追いつき追い越すことを目指し、単に台湾問題での米国の軍事介入を防止する軍事的技術的能力向上のみならず、政治経済軍事各面を総合して米国中心の世界秩序を変革し、中国の影響力の拡大による新世界秩序の形成を徐々に実現させるという長期的国家戦略を持ち、着々と諸施策を実行して行くと見るべきであろう。日本としては、中国と友好的に協力関係を進めるべきであるが、1、2回の首脳会談で楽観的になることなく、中国がこのような長期戦略の下に行動していることを念頭におきつつ、忍耐強く賢明に付き合い、中国が自国の国益の観点からも現状変革型ではなく現状維持型の長期政策に移行することが得策であると考えるように持って行く、工夫を重ねるべきであろう。
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