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2015-12-15 00:00
(連載1)テロリストへの網
緒方林太郎
衆議院議員(民主党)
テロ対策には色々な方策がありますが、国際法上、逃がさないように網を掛けていくというものがあります。これはかつて担当していたので思いがあります。テロ関係の条約というのは、基本的に構造が似ています。「テロ行為の犯罪化」+「aut dedere aut judicare(引渡しか訴追か)の原則」です。前者は、特定のテロ行為を国内法上犯罪化することを求めています。後者は何かと言うと、テロ行為の犯罪者は滞在地国で起訴するか、滞在地国が起訴しないのなら関係国に引き渡すか、どちらかでなくてはならないということです。
この条約が幅広い国に厳密に適用されると、世界中に反テロの網が掛かり逃げられなくなるということはご理解いただけるかと思います。犯罪の類型が明確になって、その類型に当てはまるテロリストは訴追されるか、引き渡されるかですから、逃げ道はかなり減ってきます。そういう意味で、テロリストに安住の地を与えないためにはテロ関係諸条約を広めていくことはとても重要なことです。
しかし、ここからが難しいのです。あまり厳しいテロ関係条約を作ると、テロ行為と関係の無い行為までもが含まれるのではないかという懸念を惹起して、テロ関係条約に入ってくれないのです。上記の構造から分かっていただけると思いますが、締結国が少ないとテロ関係条約は意味がないのです。
私はかつて「海洋航行不法行為防止条約(SUA条約)」という条約の改正議定書の交渉に携わったことがあります。この条約が辿った運命はテロ法制の変遷と難しさをよく表しています。元々、「海賊」という行為は国際慣習法の中でも犯罪だと見なされていました。ただ、1985年に起きた(国際法を学べば必ず出て来る)アキレ・ラウロ号事件がきっかけとなって、このSUA条約が作られました。海賊というのは、船舶を外から襲う行為です。実はこの時点で、航空機におけるハイジャックに相当するもの(つまり、船舶内部から乗っ取る行為)への法整備が国際法にはありませんでした。それを踏まえて、作られたのがSUA条約です。締結国は166ヶ国、「網」としては機能していると言っていいでしょう(私は1期目の時、シーシェパードをこのSUA条約で取り締まれないかと質問しています。SUA条約では「船舶を破壊する行為」が犯罪化されているのです。外務省は、シーシェパードは海賊に当たるとは一概に言えないという立場ですので、ならば、このSUA条約で取り締まってはどうかという視点です。それなりの答弁は返ってきています)。(つづく)
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