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2015-12-11 00:00
天安門事件は中国の“偽装民主化”がもたらした悲劇
倉西 雅子
政治学者
マイケル・ピルズベリー氏の著書『China 2049』は、これまで日本国内では知られていなかった米中関係の歴史や知識を得る上でも極めて貴重な本です。アマゾンのネット・サイトを覗いてみますと、硬派な内容にも拘わらず、総合20位に堂々ランキング・インしており、反響の高さが伺えます。
『China 2049』を読み進めると驚きの連続なのですが、本書から、深い霧で覆われていた天安門事件の真相をも読み取ることができます。1970年代、中国は、ソ連に“百年マラソン”、即ち、弱小国に見せかけて相手国から技術や資金を獲得し、優位に立ったところで、相手国を打ち負かす戦略を見抜かれたため、アメリカへの接近を図ります。つまり、中国は、ソ連に代わってこの戦略遂行に利用できる国を求めたのです。一方、冷戦期にあってソ連邦と鋭く対峙していたアメリカも、対ソ包囲網の重要パートナーとして中国との協力に踏み出します。両国の利害は一致し、自由主義国と共産主義国との間の奇妙な“準同盟関係”が成立するのです。
ところが、この協力関係を維持し、アメリカから強国となるための支援を引き出すためには、中国は、アメリカを騙し続ける必要がありました。巧みな工作や情報操作で、中国は、“今はか弱い共産主義国であるけれども、将来的には体制を民主化し、自由な国を目指してる”とアメリカに思い込ませたのです。実際に、当時の中国の歩みは、表面上、鄧小平の指導の下に政治経済の両面において民主化の道を歩んでいるようにも見えました。その一方で、この“偽装民主化”は、アメリカのみならず、自国民をも騙すこととなります。中国の学生の多くは、自国が自由で民主的な国家へと変わる時期が到来していると信じ、中国の将来をかけた民主化運動に身を投じるのです。そして、悲劇は、1989年6月4日に訪れます。
その後、中国は、自らの対米“偽装民主化”作戦を忘れたかのように、天安門事件の背後にはアメリカの体制転覆工作があったと批判し、仮面をかなぐり捨てて、共産党一党独裁体制の堅持へとひた走ります。そして、中国のもう一つの戦略上の工作である“偽装平和国家化”の仮面が剥がれた今、日米をはじめ、国際社会は、天安門の教訓に学び、中国の真の姿を直視しなければならない時が来ているのではないでしょうか。
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