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2015-12-08 00:00
(連載2)「沖縄・辺野古代執行訴訟」の本質
加藤 成一
元弁護士
このように、「国の統治行為」に属する政府の判断については、最高裁判所もこれを尊重し自制しているのであり、ましてや、国の安全保障に責任を持てない地方自治体の知事が、国の判断を左右する法律上の権限を保有していないことは自明であろう。すなわち、安全保障上の最終的な政治判断や政策判断は、「国の専権事項」であり、地方自治体にはその権限はない(地方自治法第1条の2)。政府の政治判断・政策判断の是非は、国民が選挙を通じて決定するのである。
なお、駐留軍用地特措法の適用につき、沖縄県知事が署名を拒否した「沖縄県知事署名等代行職務執行命令事件」に関して、最高裁大法廷判決は「沖縄県における駐留軍基地の実情及びそれによって生じる種々の問題を考慮しても、同県内の土地を駐留軍の用に供することが、すべて不適切で不合理であることが明白であるとは言えない」と判示し、国の代執行を認めている(最大判平成8・8・28民集50-7-1952)。
18世紀イギリスの著名な自由主義経済学者アダム・スミスは、「国の最大の義務は、外国の暴力や侵略から、軍事力によって国と国民を守ることである」と言っている(アダム・スミス著『国富論』下巻、水田洋訳149頁、昭和44年河出書房新社刊)。18世紀の昔から現在に至るまで、安全保障は国の最大の義務であり責任である。このことは日本のみならず、洋の東西を問わず諸外国でも全く同様であると言えよう。懸念されることは、翁長知事が、東シナ海での尖閣諸島への領海侵入やプラットフォーム建設、南シナ海での人工島建設など、力による現状変更を試みる「中国の脅威」について、なぜか沈黙し無視していることである。同知事による「辺野古移設絶対阻止」の結果、辺野古移設が頓挫し、日米同盟に亀裂が入れば、日本の「抑止力」にも影響を及ぼしかねない。そのことは、中国や北朝鮮に、日本に対する軍事力行使を誘発させる隙を与えることになろう。
本件「沖縄・辺野古代執行訴訟」の本質は、「国の統治行為」に属する安全保障に関する権限は、国土と国民を守る義務と責任がある「国の専権事項」であり、安全保障について責任を負えない地方自治体の知事にはその権限はない、ということである。したがって、翁長知事が主張する「地方自治権の侵害」もない。裁判所には、適正かつ迅速な判断を望みたい。(おわり)
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