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2015-12-07 00:00
(連載1)「沖縄・辺野古代執行訴訟」の本質
加藤 成一
元弁護士
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐり、翁長沖縄県知事による辺野古埋立承認取り消しに対し、国がその撤回を求めた。国と沖縄県との間の「沖縄・辺野古代執行訴訟」は、12月2日福岡高裁那覇支部で第一回口頭弁論が行われた。同訴訟において翁長知事は、仲井眞前知事による埋立承認には、「県内移設の必要性がない」「環境破壊がある」などの法律上の瑕疵(欠陥)があり、さらに「地方自治権を侵害し違憲である」などと主張している。
しかし、埋立承認取り消しの要件である「瑕疵」の存在は、取り消しをした翁長知事側に法律上の立証責任がある。翁長知事は、「瑕疵」の存在は、同知事が設置した「検証委員会」の検証の結果判明したなどと言っている。しかし、「検証委員会」において、委員の人選が真に公正中立であったのかどうか、埋立承認手続きを担当した県職員らからの経過報告や意見などを十分に確認し、一切の先入観なく客観的合理的に評価し判断したのかどうか、検証結果につき政治的要素が皆無であったのかどうか、等につき疑問がある。最初から、結論ありきの「検証」であった可能性も否定し切れないのではないか。
さらに、翁長知事は盛んに「沖縄の民意」を強調するが、国の安全保障については、限られた地域における「民意」だけではなく、日本国民全体の「民意」も重要であろう。また、同知事は、「いかなる手段を使ってでも辺野古移設を阻止する」と公言するが、普天間基地の危険性除去について、辺野古移設以外の対案や解決策は一切提示せず、絶対反対を叫ぶだけである。辺野古移設なしでは、普天間基地の返還が極めて困難な現実を考えると、同知事の行動は、基地負担の軽減を求める沖縄県民の利益にも結果的に反するもの、と言えよう。
ところで、翁長知事が埋立承認の「瑕疵」として主張している「県内移設の必要性がない」との点は、明らかに国の権限を侵し、地方自治体の権限を越えるものと言えよう。なぜなら、今回の辺野古移設のような、日米安保条約に基づく米軍基地設置の必要性や設置場所の選定等は、米軍との関係や戦略上、地政学上の必要性・合理性・合目的性など、日本政府による安全保障上の高度な政治判断・政策判断を必要とし、まさに「砂川最高裁大法廷判決」(最大判昭和34・12・16刑集13-13-3225)の言う、裁判所の司法審査の対象外である「国の統治行為」に属する、と考えられるからである。国には、外国の侵略から国土と国民を守る安全保障上の義務と責任があるが、地方自治体の知事や市長は、安全保障上の責任を負うことはできないのである。(つづく)
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